日本生態学会誌
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最新号
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特集 藻類に見られる多様な繁殖システムの生態と進化
  • 別所 和博
    2023 年 73 巻 2 号 p. 33-47
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/11/04
    ジャーナル オープンアクセス
    電子付録
  • 堀之内 祐介
    2023 年 73 巻 2 号 p. 49-56
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/11/04
    ジャーナル オープンアクセス
    海藻を含む多くの植物は、複相(2n)の多細胞の体である胞子体だけでなく、単相(1n)の多細胞の体である配偶体を持ち、有性生殖を通じてこれらの世代を交代する生活環を示す。アオサ藻綱に属する海産緑藻類は、世界中の海岸の一次生産者として沿岸生態系を支えている。アオサ藻綱には、主に6つの有性生殖を行う目が知られるが、これらの目間や目内で生活環が多様化している。生活環の違いは、古くから環境の違いや生態学的ニッチなどとの関連が疑われている。しかし、緑藻では生活環の識別が難しい種も多く、なぜ、どのようにして緑藻の生活環が多様化したのかは十分に理解されていない。本稿では、海産緑藻の生活環の多様性を概観し、それらの生活環の生態学的な特性とその違いについて簡単に述べるとともに、生活環の多様化を進化的、生態学的な観点から理解する上でのいくつかの課題について触れる。
  • 神谷 充伸
    2023 年 73 巻 2 号 p. 57-
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/11/04
    ジャーナル オープンアクセス
    真正紅藻類の多くは同形世代交代型生活環を示すが、単相の配偶体と複相の胞子体が同じ形態で、両世代が同時期・同所的に出現するため、世代交代を行う意義については不明な点が多い。これまでの野外調査や培養実験などにより、波当たりによって配偶体と胞子体の割合が異なること、水分含有量、藻体強度、発芽速度などが世代間で異なることが明らかになり、世代間の特性が異なることによって多様な沿岸環境に適応しやすくなる可能性が示された。一方で、有性生殖をせずに胞子体だけで個体群を維持している「独立胞子体」が様々な同形世代交代型紅藻で報告されている。アヤギヌ類の研究では、世界各地で何回も独立胞子体が生じていること、遺伝的に分化した個体間での交雑で独立胞子体化が起こることが明らかになり、実際に様々な同形世代交代型紅藻で独立胞子体が報告されている。さらに、独立胞子体はしばしば分布の外れで優占していること、有性生殖個体よりも広い温度帯で繁殖できることが示され、独立胞子体は分布拡大に貢献している可能性が示唆された。生理生態的特性が異なる2つの世代を備え、場合によっては無性生殖だけで繁殖可能な同形世代交代型生活環は、生育環境が大きく変化する潮間帯で生き抜くための有効な戦略と考えられる。
  • 星野 雅和
    2023 年 73 巻 2 号 p. 67-
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/11/04
    ジャーナル オープンアクセス
    多くの褐藻類の生活環には有性生殖の経路(接合と減数分裂)に加えて、配偶子の単為発生や栄養生殖などの無性的経路が報告されている。しかし、これらの無性的経路の多くは培養下での観察に基づいて報告されたものであり、野外集団における重要性や適応的意義についてはわかっていないことも多い。本稿では、いくつかの褐藻類における生活環・生活史研究について解説しながら、それらの生活環に見られる無性的経路がそれぞれの種・集団の繁殖や分布域、有性生殖・世代交代の維持にどのような影響を与えているのかを概説する。
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