日本生態学会誌
Online ISSN : 2424-127X
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55 巻, 3 号
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  • 原稿種別: 表紙
    2005 年 55 巻 3 号 p. Cover1-
    発行日: 2005/12/25
    公開日: 2017/05/27
    ジャーナル フリー
  • 原稿種別: 目次
    2005 年 55 巻 3 号 p. Toc1-
    発行日: 2005/12/25
    公開日: 2017/05/27
    ジャーナル フリー
  • 難波 利幸
    原稿種別: 本文
    2005 年 55 巻 3 号 p. 417-418
    発行日: 2005/12/25
    公開日: 2017/05/27
    ジャーナル フリー
  • 松村 正哉
    原稿種別: 本文
    2005 年 55 巻 3 号 p. 419-424
    発行日: 2005/12/25
    公開日: 2017/05/27
    ジャーナル フリー
    昆虫を中心とした陸上節足動物群集には、共食い、雑食、ギルド内捕食などのように複数の栄養段階の餌を食べる雑食性が広く見られる。ギルド内捕食が捕食者のパフォーマンスを向上させるのか否かを明らかにするために、生態化学量論、すなわち、異なる栄養段階の生物の間で窒素含有率やC: N比などの化学量の相対的バランスを比較するアプローチによる以下の実験を行った。アメリカの潮間帯湿地の陸上節足動物群集は、大型のコモリグモ類を上位捕食者として、その下に小型のクモや卵捕食性のカスミカメムシ、植食者のウンカ・ヨコバイ類を中心に構成されている。この群集の4つの栄養段階(植物、植食者、雑食者、捕食者)を構成する種の窒素含有率の平均値は、栄養段階が高くなるにつれて(植物<植食者<雑食者<捕食者)高くなり、逆にC: N比は低下した。このことから、捕食者は植食者に比べて生態化学量からみて優れた餌であることがわかった。次に、ギルド内捕食した場合に捕食者の成長率が速くなるか否かを明らかにするため、餌種の生態化学量を考慮した捕食実験を行った。その結果、上位捕食者のコモリグモに同一ギルド内の捕食者である小型のコサラグモを餌として与えた実験では、コモリグモの成長率は、植食者のウンカを餌として与えた場合に比べて低く、逆に同一ギルド内の捕食者であるカスミカメムシを餌として与えた実験では、植食者のウンカを餌として与えた場合に比べてコモリグモの摂食量が増加し成長が速くなった。2つの実験で異なる結果が得られた理由として、餌種の行動的な特性が生態化学量以上に捕食の成否、ひいてはコモリグモの捕食量や成長率にも大きく影響したと考えられた。以上から、潮間帯湿地の陸上節足動物群集において、栄養段階の高いグループほど高い窒素含有率を持つことが確かめられたものの、「窒素含有率の高い捕食者をギルド内捕食する場合に捕食者の成長が速くなる」という当初の仮説を支持する結果は得られなかった。ギルド内捕食によるパフォーマンスの向上には、生態化学量の影響よりも、むしろ餌種の捕獲されやすさや捕食に対する防御行動に起因した摂食量の違いが大きく影響していると考えられた。
  • 中村 誠宏, 野沢 亮吉
    原稿種別: 本文
    2005 年 55 巻 3 号 p. 425-430
    発行日: 2005/12/25
    公開日: 2017/05/27
    ジャーナル フリー
    撹乱は、直接効果だけでなく相互作用の連鎖によって生じる間接効果でも生物の密度・行動・生存率・分布などに大きな影響を与える可能性がある。その一つは、撹乱後に生き残った植物の表現型の変化によって生じる間接効果である。特に、パイオニア植物では撹乱後に幹から萌芽枝を伸ばす補償生長が起こる場合が多く、補償生長によって間接効果が引き起こされることが知られている。そこで、本稿では撹乱後の植物の変化として補償生長に注目し、撹乱が植物上の昆虫群集へ与える間接効果の研究について解説(紹介)を行った。撹乱による間接効果に関して、これまでに次の3つの成果がある。(1)植食性昆虫の密度にプラスの間接効果を与えること、(2)上位の栄養段階にある捕食性節足動物の密度に影響が及ぶこと(ボトムアップカスケード)、(3)植食性昆虫や捕食性節足動物の種数に影響を与えることである。しかし、これまでの研究では、撹乱後1-2年の短期的な調査に基づくものがほとんどで、「その間接効果の影響力が続く期間」については明確にされてこなかった。今後、撹乱による間接効果の重要性を正しく評価するためには、長期調査を行うことが必要であろう。
  • 市岡 孝朗
    原稿種別: 本文
    2005 年 55 巻 3 号 p. 431-437
    発行日: 2005/12/25
    公開日: 2017/05/27
    ジャーナル フリー
    熱帯域には、アリ植物と呼ばれる、アリと密接な相利共生系を形成するように独特の進化をとげた植物種が多くの分類群にみられる。アリ植物は、茎などの組織を変型させて空洞を形成し、そこを巣場所として共生するアリに提供する。アリ植物に営巣する共生アリは、植食者からアリ植物を防衛する。東南アジア熱帯を中心に分布するオオバギ属植物には何種類ものアリ植物種が含まれており、広い地域で複数のアリ植物種が共存する。オオバギとアリとの間に成立する相利共生系には、パートナーシップに強い特異性が見られ、両者の関係のあり方や相互依存度の強さは、オオバギの種ごとに異なっている。そうした二者間の関係性の種間変異は、特に、アリによる対植食者防衛(アリ防衛)の強さとそれと相補的にはたらく植物の物理的化学的防衛(非アリ防衛)の強さのバランスに顕著にあらわれることが近年明らかになってきた。アリ防衛と非アリ防衛のバランスの種間変異は、オオバギをとりまく植食者群集や共生アリを捕食する動物の群集の多様化をもたらすことが考えられる。本稿では、現在までの研究をふりかえって、これまでに明らかになったアリ-オオバギ共生系の多様性を紹介するとともに、アリ-オオバギ共生系の多様性が、それをとりまく生物群集にどのような影響をあたえているのかといった問題を議論した。筆者とその共同研究者によるこれまでの研究の結果は、アリ-オオバギ共生系にみられる多様性が、この系に関連する生物群集の多様性を増大させる効果をもっていることを示唆している。
  • 吉田 勝彦
    原稿種別: 本文
    2005 年 55 巻 3 号 p. 438-445
    発行日: 2005/12/25
    公開日: 2017/05/27
    ジャーナル フリー
    一次生産量変動の大きさが動物の食性の幅の進化に与える影響を明らかにするため、進化的に構築された食物網に一次生産量変動を加えるコンピュータシミュレーションをおこなった。この食物綱は動物種と植物種で構成され、植物種は一次生産をおこない、単独で成長するが、動物種は他の種を捕食しないと生きられないとする。動物種は自分の好みに合う餌を選んで捕食する。動物種はそれぞれ違った食性幅をもち、食性幅が狭いほど、捕食によって取り入れたエネルギーを効率よく成長に使えると仮定する。シミュレーションの結果、一次生産量変動がない場合には食性幅の狭いスペシャリストが優占する傾向が見られた。小規模の一次生産量変動が加わると、食物綱全体の種数がわずかに減少する。この時、元々多くの餌を捕食しているジェネラリストにはほとんど影響がなかったが、少数の餌しか捕食していないスペシャリストの種数は大きく減少した。大規模な変動が加わるシミュレーションでは、時々大規模な一次生産量の減少が起こり、動物種の多くが絶滅し、その結果植物の種数が大幅に増加する。このような条件では、食性幅を広げればそれだけ多くの餌を得られるし、他の動物種との餌の競合も起こりにくいため、ジェネラリストが定着しやすくなる。そのため、大規模な一次生産量変動が加わるとジェネラリストが相対的に増加すると考えられる。
  • 難波 利幸
    原稿種別: 本文
    2005 年 55 巻 3 号 p. 446-452
    発行日: 2005/12/25
    公開日: 2017/05/27
    ジャーナル フリー
    本論文では、「生態化学量論」「間接効果」「進化」の3つをキーワードとして、特集「生物間相互作用と群集構造:生態化学量論、間接効果、そして進化」に寄せられた4つの個別論文及び2004年12月に大阪女子大学で開催された第5回地域生態系共同研究集会「生物間相互作用への注目:遺伝子から群集、そして保全」(以下「研究集会」という)でのいくつかの講演の背景を説明し、それらを関連付けることを試みる。本特集で、松村は雑食と生態化学量論の関係についての実験研究の結果を報告し、中村・野沢は攪乱後のボトムアップのカスケード効果について野外での研究を紹介している。研究集会では、加賀田がボトムアップのカスケード効果と生態化学量論の関係について報告した。本論文では、生態化学量論の発展を概観し、「成長速度仮説」を紹介した。そして、陸上生態系でも、植物のリン(P)が不足し植食者のP摂取が不十分になる可能性を示唆した。本特集で市岡は、多くの種が絶対共生型のアリ植物であるオオバギ(Macaranga)属にも、随意共生型のアリ植物や非アリ植物も見られ、オオバギ-アリ共生系を取りまく生物群集は多様であることを報告した。本論文では、雑食着であるアリを取りまく群集の研究に安定同位体が使われた例を紹介し、オオバギ-アリ共生系の研究にも、安定同位体比や化学量比を調べることが役立つ可能性を示唆した。上記のいずれの研究にも、間接効果、特に形質を介した間接効果や相互作用の変更型の間接効果が関与している。このような間接効果の理論的研究の例として、研究集会での山内の講演と難波の講演を紹介し、形質を介した間接効果や相互作用の変更型の間接効果についての理論研究が発展することの必要性を述べた。本特集で、吉田はLotka-Volterraモデルを用いて仮想的な生物群集を進化させ、一次生産量の変動の大きさと食性の進化の関係を調べた結果を報告した。本論文では、吉田の論文を含む生態系の複雑性と安定性の関係の研究について最近の例を紹介し、モデル間の仮定の違いと類似性を吟味して普遍的に成り立つ法則を探る努力や、競争や相利関係などの横の種間関係と捕食などの縦の種間関係をともに考慮することの重要性を指摘した。
  • 三橋 弘宗, 畑田 彩
    原稿種別: 本文
    2005 年 55 巻 3 号 p. 453-455
    発行日: 2005/12/25
    公開日: 2017/05/27
    ジャーナル フリー
    第52回生態学会大阪大会の自由集会「博物館の生態学」を2005年3月に大阪にて開催した。本特集は、その自由集会を参考にして企画されたものであり、序文となる本稿では、自然史研究と生態学の関連、自然史研究を支える基盤、市民が参加できる生態学について解説し、生態学の周辺領域の重要性を主張した。
  • 永野 昌博, 畑田 彩, 澤畠 拓夫
    原稿種別: 本文
    2005 年 55 巻 3 号 p. 456-465
    発行日: 2005/12/25
    公開日: 2017/05/27
    ジャーナル フリー
    里山科学館越後松之山「森の学校」キョロロは、人口約3,000人の農村地域において地域住民と共に地域に根ざした研究-等身大の科学-の実践による地域の活性化を目指して、里山保全、社会教育、産業支援、農村と都市との交流活動など幅広い事業を展開している博物館である。本稿では、学芸員としての使命と地域住民からの期待との間で試行錯誤しながら進めている「教育・普及活動」、「里山保全活動」、「住民参加型GISデータベースの活用」の活動事例を紹介する。また、それらの活動を通じて考えられた都市、都市近郊とは異なる農村地域の現状とニーズに基づいた地域固有の里山保全活動の方向性ならびに農村地域の博物館が地域社会や生態学分野に果たす意義や役割、課題や可能性について提案する。
  • 和田 岳
    原稿種別: 本文
    2005 年 55 巻 3 号 p. 466-473
    発行日: 2005/12/25
    公開日: 2017/05/27
    ジャーナル フリー
    博物館学芸員の大半は、いくつもの仕事を抱えており、研究に時間や労力を割くことは難しい。しかし、多様な市民との接点の多い博物館の利を活かせば、市民を巻き込むことにより、研究活動を行うことが可能なのではないだろうか。さらに市民と連携した調査活動は、市民への普及教育でもあると考えることができ、調査の内容によっては資料収集活動の一環とも考えられる。本稿では、メーリングリストやウェブサイトを活用した市民を巻き込んだ調査研究の方法論と成果を、1)カラスのねぐら調査、2)ヤモリの分布調査、を実例として紹介する。
  • 佐久間 大輔
    原稿種別: 本文
    2005 年 55 巻 3 号 p. 474-480
    発行日: 2005/12/25
    公開日: 2017/05/27
    ジャーナル フリー
    自由集会におけるパネラーと会場からの意見をふまえて、自然史系博物館が生態学研究および生態学教育に果たしうる役割について述べた。地域とつながりを持つ博物館の活動はすでに多くの実績を持ち、地域の研究や市民への教育には、博物館と大学など諸機関や学会とが連携して活動することが肝要であり、生態学教育の拠点としても博物館を活用すべきであることを述べた。
  • 鎌田 磨人
    原稿種別: 本文
    2005 年 55 巻 3 号 p. 481-486
    発行日: 2005/12/25
    公開日: 2017/05/27
    ジャーナル フリー
    日本の社会の中で、地域博物館が研究機関の一つとして位置づけられるようになってきたのは1980年代になってからであり、その動きは1990年前後から加速した。同時に、顕在化した生物多様性の減少や生態系の劣化等の問題に対応していくことが、博物館に求められるようになった。生態学が博物館の中で扱われる領域として取り込まれ、博物館で働く生態学研究者が増加してきたのは、このような社会的背景による。今日の博物館は、標本資料等を分類・保管するだけでなく、「人間と自然との共生のあり方」を検討・提言し、そして、「地域課題にこたえる」ことが必要となっている。この中で、フィールドに内在する人と自然との関係を読み解いていくことが、地域博物館における生態学の主要なテーマの一つである。地域博物館の学芸員としての生態学研究者には、「地域住民自らが地域の自然や文化のあり方に目を向け、その地域の自然の状態や、自然と人間との関係を見直すことができるようになり、そして、それぞれの地域を住民自らが評価できるようになることを支援していく」役割が求められている。そのため、地域住民とともに研究活動等を行うことをとおして、地域住民が地域の文化や自然と結びついていくための仕組みを作っていく必要がある。地域博物館は、設置者、設置目的、規模等において千差万別である。それぞれの博物館の役割や持ち味を確認しながら、互いにそれらを活かせるよう連携していく必要がある。「地域貢献」が必要とされる地方大学でも、博物館と類似した目標に基づく活動が増えてきており、そのような大学との連携強化のあり方も考えていかなければならない。
  • 川端 善一郎
    原稿種別: 本文
    2005 年 55 巻 3 号 p. 487-489
    発行日: 2005/12/25
    公開日: 2017/05/27
    ジャーナル フリー
  • 石田 惣
    原稿種別: 本文
    2005 年 55 巻 3 号 p. 489-
    発行日: 2005/12/25
    公開日: 2017/05/27
    ジャーナル フリー
  • 畑田 彩, 三橋 弘宗
    原稿種別: 本文
    2005 年 55 巻 3 号 p. 490-493
    発行日: 2005/12/25
    公開日: 2017/05/27
    ジャーナル フリー
    日本生態学会における自然環境に関する普及教育活動は、他の学会に比べると組織化されている訳でもなく、分野としての位置付けも十分なされていない。今回の特集では、まず社会教育機関としての博物館活動を紹介するとともに、課題を列挙した。主な課題は二つである。1)生態学を一般市民に普及する方法は未だ発展途上であり、今後、生態学者と連携することでより効果的な方法論を生み出せる可能性が多分にあること。2)博物館における普及活動や研究活動には明確な評価基準や評価軸がなく、今後の課題であること。最後に「博物館の生態学」が何を目指すのかについて、筆者の見解を述べた。
  • 占部 城太郎, 田中 健太
    原稿種別: 本文
    2005 年 55 巻 3 号 p. 494-496
    発行日: 2005/12/25
    公開日: 2017/05/27
    ジャーナル フリー
  • 河口 洋一, 中村 太士
    原稿種別: 本文
    2005 年 55 巻 3 号 p. 497-505
    発行日: 2005/12/25
    公開日: 2017/05/27
    ジャーナル フリー
    北海道東部を流れる標津川下流域では、国内で初めてとなる川の再蛇行化実験が実施された。実験は、直線化によって河道周辺に残された旧河道(河跡湖)の一つと、直線河道の再連結によって行われた。再蛇行化の前後に、直線河道と旧河道を村象として河道形状や地形に関する調査、藻類、底生動物、魚類に関する調査と安定同位体比による食物網構造の解析を行い、実験の評価を試みた。室内実験と再蛇行試験区での調査から、河道の分流部での流速分布や土砂の堆積を予測するモデルを組み立てた。再蛇行後の蛇行河道は、直線河道では見られない縦横断形状の変化が見られたが、水深、流速、底質といった物理環境要素は河道間で異ならなかった。再蛇行後、直線流路、蛇行流路ともクロロフィルa量は小さかったが、直線流路の堰き上げ下流部では著しく大きかった。蛇行流路(旧河道)の底生動物や魚類は、再蛇行化によって止水性から流水性に入れ替わった。底生動物にとって蛇行湾曲部の内岸側に形成される寄洲は重要な生息場であり、魚類にとっては外岸側で河岸浸食によって水中に倒れ込んだ樹木が重要な生息場であった。再蛇行前、直線流路と蛇行流路(旧河道)に生息する生物相の同位体比特性には違いがあり、両者の食物網構造は異なった。再蛇行化実験では個々の研究成果が得られ、現在は、個々の成果の補完や分野を横断する研究テーマの発掘を検討している。
  • 桐谷 圭治
    原稿種別: 本文
    2005 年 55 巻 3 号 p. 506-513
    発行日: 2005/12/25
    公開日: 2017/05/27
    ジャーナル フリー
    農業生態系をこれまでの短期的・局所的(作物別)視点から脱却して、長期的・広域的視点からながめる必要がある。そのためには土地利用の変化、害虫管理を含む作物管理手法、さらに気候変動も考慮にいれなければならない。害虫あるいは希少種といわれるものも、長期的にはそれぞれの地位が逆転する場合も起こる。これらは害虫管理と生物多様性保全を包括したIBM、すなわち総合的生物多様性管理の必要性を示している。戦後の「コメ1俵増産」連動に動員された一連の耕種技術が予想外のニカメイガの低密度化をもたらした。なかでもイネの早植えがその減少開始の動機となり、韓国、台湾、中国でも日本より数年ないし10数年のおくれを伴って起こっている。また発生ピークから最少になるまでに12-14年を要している。現在、カメムシ類が水稲と果樹の最大の害虫となっている。斑点米カメムシの多発生は減反にともなう休耕地などの繁殖場所の増加が要因となり、果樹カメムシでは1960年代の拡大造林により増加したスギヤヒノキの人工林が、その結実年齢をむかえ、球果で生育するカメムシ類の増加をもたらした。夏の高温は翌年の球果の豊作をもたらす。さらに地球温暖化が、カメムシ類の冬期死亡率の減少、年間世代数の増加、繁殖の活性化を通じて、両者の同時多発をもたらしている。カメムシとは逆に、夏の低温・多雨がニカメイガの大発生をもたらすため、地球温暖化はニカメイガにとっては不利に働く。減反が行われなかった韓国ではカメムシ類によるイネの被害は顕在化しなかったし、果樹カメムシ被害は日本に遅れること20年の1990年半ばに報告されだした。希少種の絶滅は、その生息地の崩壊によることが多いが、ニカメイガの生息地は現在も広大な面積で存在する。ニカメイガの絶滅を防いでいると考えられるのは、密度依存的に働くメイチエウサムライコマユバチであろう。カメムシ問題は土地利用政策の変化に根ざしたものであり、通常の害虫管理の範囲を越えたものである。また縦割り組織のため、稲と果樹カメムシは別個に扱われてきた。カメムシの戦略的害虫管理のためには、従来の枠を越えた「大規模・長期」的視点が不可欠である。ここでは密度の代わりに病害虫発生予察情報による警報数を、「実験」の対照区としては韓国を考えた。現在、日本では減反も限界で、地球温暖化が発生を助長するとしても斑点米カメムシによる被害は現在をピークに下火になると予想される。他方、人工植林面積は過去30年間漸減しているが、針葉樹林面積は減少せず樹齢の老齢化が進んでいる。したがって果樹カメムシによる被害は、なお漸増の傾向にあるといえる。
  • 津田 敦, 武田 重信
    原稿種別: 本文
    2005 年 55 巻 3 号 p. 514-519
    発行日: 2005/12/25
    公開日: 2017/05/27
    ジャーナル フリー
    海洋では光環境が良いにもかかわらず栄養塩が高濃度で残存する海域があり、このような海域では微量栄養素である鉄が不足していることが近年提唱された。海洋における鉄欠乏仮説を検証するため、東西亜寒帯太平洋において鉄添加実験が行われた(西部:SEEDS、東部:SERIES)。鉄と水塊を標識する不活性気体、六フッ化イオウを64-80km^2の海域に加え、13-26日間の生物・化学的応答を水塊追跡しながら観測した。2001年に西部亜寒帯太平洋で行われたSEEDSにおいては鉄添加により顕著な光合成活性の増加が観察され、混合層内のクロロフィル濃度は初期値および非散布域の16倍に達した。この顕著な植物プランクトンの増加は、他の海域で行われた実験より表層混合層深度が浅く光環境が良好であったことに加え、成長速度の速い中心目珪藻が増加したことが主な要因と考えられた。藻類の増殖は栄養塩濃度と二酸化炭素分圧の顕著な低下を伴ったが、散布から13日目までの沈降粒子束は積算光合成量の12.6%にとどまった。すなわち固定された炭素の大部分は粒子態として混合層内に留まった。これらの事実は太平洋においても鉄が植物プランクトンの増殖を制限していることを明らかにしたが、固定された炭素の行方を解明するにはより期間の長い実験が必要であることを示唆した。東部亜寒帯太平洋で行ったSERIESはカナダとの共同研究であり、我々は実験の後半を観測した。実験期間は大きく2つに分けることができ、前半は低い植物生物量とプレミネシオ藻類の優占、後半は高い植物生物量と珪藻の優占で特徴づけられた。SEEDSに比べ、SERIESでは植物プランクトンの増加は遅く、最大値も低くとどまったが、鉄散布海域で非散布域に比べ有意に大きい沈降粒子束を観察した。しかし、沈降量は光合成によって表層に蓄積した有機物量の20%程度であり、多くの部分は表層で摂餌や分解を受けていることが明らかとなった。本稿では鉄散布実験のような中規模生態系操作実験の利点と問題点を議論する。
  • 奥田 昇
    原稿種別: 本文
    2005 年 55 巻 3 号 p. 520-521
    発行日: 2005/12/25
    公開日: 2017/05/27
    ジャーナル フリー
  • 島谷 健一郎
    原稿種別: 本文
    2005 年 55 巻 3 号 p. 521-523
    発行日: 2005/12/25
    公開日: 2017/05/27
    ジャーナル フリー
  • 田中 健太, 占部 城太郎
    原稿種別: 本文
    2005 年 55 巻 3 号 p. 524-529
    発行日: 2005/12/25
    公開日: 2017/05/27
    ジャーナル フリー
  • 齊藤 隆
    原稿種別: 本文
    2005 年 55 巻 3 号 p. 530-532
    発行日: 2005/12/25
    公開日: 2017/05/27
    ジャーナル フリー
  • 松田 裕之
    原稿種別: 本文
    2005 年 55 巻 3 号 p. 533-534
    発行日: 2005/12/25
    公開日: 2017/05/27
    ジャーナル フリー
  • 深見 理
    原稿種別: 本文
    2005 年 55 巻 3 号 p. 535-538
    発行日: 2005/12/25
    公開日: 2017/05/27
    ジャーナル フリー
  • 村上 正志
    原稿種別: 本文
    2005 年 55 巻 3 号 p. 539-542
    発行日: 2005/12/25
    公開日: 2017/05/27
    ジャーナル フリー
  • 原稿種別: 文献目録等
    2005 年 55 巻 3 号 p. Misc1-
    発行日: 2005/12/25
    公開日: 2017/05/27
    ジャーナル フリー
  • 原稿種別: 文献目録等
    2005 年 55 巻 3 号 p. Misc2-
    発行日: 2005/12/25
    公開日: 2017/05/27
    ジャーナル フリー
  • 原稿種別: 付録等
    2005 年 55 巻 3 号 p. App6-
    発行日: 2005/12/25
    公開日: 2017/05/27
    ジャーナル フリー
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