理科教育学研究
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43 巻, 3 号
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原著論文
  • 柴 一実
    2003 年 43 巻 3 号 p. 1-12
    発行日: 2003/03/05
    公開日: 2022/06/30
    ジャーナル フリー

    本研究は,占領下日本における理科関係のCIE 教育映画の実態, CIE 教育映画の学校での利用法及びCIE教育映画の理科教育改革に及ぼした影響などについて明らかにすることを目的とした。諸資料による文献研究及び関係者へのインタビューの結果,次の諸点が認められた。1. CIE 教育映画はアメリカやイギリスなどで製作されただけでなく, 日本でも製作された。日本で製作されたCIE 教育映画「火の用心」は,アメリカ製CIE 教育映画「火の化学」の一部を採録して製作されたが,「火の化学」に見劣りしない教育的価値の高い映画であった。2. CIE教育映画「火の用心」と「火の化学」は小・中学校の教科書の不備を補足するだけでなく,火災予防という社会的ニーズに応えるものであった。3. CIE教育映画は学校現場に映画教材を提供しただけでなく,日本における良質の映画教材の開発を一層促進し,学校での映画利用を容易にしたのではないかと考えられる。4. CIE や地方軍政部,文部省などによって, CIE 教育映画視聴後,「研究と討論の栞」を用いて「討論」を行うことが奨励されていた。5. CIE 教育映画上映は,今日の各都道府県視聴覚ライブラリー設立の契機となっており,理科における視聴覚教育の先駆けであった。

  • 齋藤 康夫, 徳永 好治
    2003 年 43 巻 3 号 p. 13-20
    発行日: 2003/03/05
    公開日: 2022/06/30
    ジャーナル フリー

    科学的思考力に関するこれまでの実践研究では,「科学の方法」を授業の中でどのように用いるかということに主眼がおかれてきた。本研究では,「科学の方法」と区別して自然事象そのものの客観性をどのように見るかを観点とする「科学の視点」を科学的思考力形成のための具体的な学習指導法の一つとして提案し,その指導法の教育的な有効性を実際の授業で評価することを試みた。そして,その「科学の視点」を生徒自身が活用できる具体的な視点として次の8項目『科学者の目』と言い表した。①『使ったものは何だろうか』②『どんな操作をしたのだろうか』③『何が変化したのだろうか』④『変化してどうなったのだろうか』⑤『(比較して)違いは何だろうか』⑥『何が原因でどんな結果になったのだろうか』⑦『何と何が関係(影響)し合っているのだろうか』⑧『キーポイントは何だろうか』これらの『科学者の目』は,理科学習における課題解決の各場面で有効にはたらき,科学的思考の役割を果たすことが示された。

  • 臼井 豊和, 松原 静郎, 堀 哲夫
    2003 年 43 巻 3 号 p. 21-28
    発行日: 2003/03/05
    公開日: 2022/06/30
    ジャーナル フリー

    本研究の目的は,高校生が実験中に行うグループ討論が,生徒の思考の変容にどの様な影響を与えるのかを調査することにある。グループ討論前後の記述の変化と,グループ討論に対する自己評価,ならびに,プロトコルから,次の5点を指摘することができた。(1) グループ討論により根拠を述べて説明できる生徒が増加し,グループ討論前の記述に比ベグループ討論後の記述は,より論理的なものとなった。(2) 教えられた立場の生徒だけでなく,教えた立場にあった生徒を含むほとんどの生徒が,グループ討論によって自分の考えがさらに深まったと感じていたことがわかった。(3) 自己評価の目的で録音を行うことにより,実験中に行われているグループ討論の様子を,高等学校でも把握することができた。(4) プロトコル,および,そのカテゴリー分析から,自己評価の根拠を推測することができ,自己評価の信頼性を判断することができた。(5) 適切な実験教材を選択することにより,高校生でも活発なグループ討論が期待できることがわかった。

資料
  • 山口 悦司, 五十里 美和, 溝辺 和成, 稲垣 成哲, 野上 智行
    2003 年 43 巻 3 号 p. 29-40
    発行日: 2003/03/05
    公開日: 2022/06/30
    ジャーナル フリー

    本研究の目的は,情報通信ネットワークを利用した理科における新しい現職教員研修のためのプログラムのプロトタイプを提案することであった。具体的には,理科の授業実践の文脈を活かしたプログラムの事例として, コンセプトマップを利用した小学校の授業実践に関するプログラムを開発するとともに,開発プロセスおよびプログラムの構成や内容を詳細に論述した。このプログラムは,神戸大学発達科学部附属明石小学校の授業実践に基づいて開発された。主要なデジタルデータは,授業,解説などの動画とその動画の概要を説明したテキスト,子どもたちが作成したコンセプトマップの静止画である。プログラムの構成については,基礎,応用,発展の3つの段階が設定されている。基礎は,コンセプトマップの特長やその作成方法を理解する段階である。応用は, コンセプトマップを導入した授業の展開の仕方,および授業を実施する上で留意すべきポイントについて理解する段階である。発展は,基礎と応用の段階で学習したことに基づいて,研修受講者自身がコンセプトマップを利用した授業展開を構想する段階である。提供されるコンテンツは,以下の8つである。(1) イントロダクション,(2) コンセプトマップの作成方法,(3) 授業事例① :クラス全体で1つのコンセプトマップを作成する授業,(4) 授業事例①の解説,(5) 授業事例②:子ども一人ひとりがコンセプトマップを作成する授業,(6) 授業事例②の解説,(7) 課題:子どものコンセプトマップに基づいた単元構想,(8) コンセプトマップに関する読書案内。

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