児童の抱く溶解に関する既有概念を科学的概念に変容させるためにはどのような授業構成を行えばよいのか。また,どのような教授ストラテジーを採用すればよいのか。本研究では,実験授業を通して授業改善の視点を明らかにすることを試みた。児童の溶解概念の変容に影響を与える視点として,①粒子概念の導入,② CL I S等の授業モデルで採り入れられているポスター作りを指導過程に位置付けることとした。実験授業の結果,以下の諸点が指摘できる。1. 粒子概念導入の有効性として,粒子を用いることにより視覚的に捉えられない溶解現象のモデル化が容易になる。また,粒子的視点を導入することが,児童の概念形成の手段となることも考えられる。2. ポスター作りについては,児童のイメージ作りや事象のモデル化に際して視覚的に理解を深めていく,また,児童同士の相互作用を通して自分の既有概念を再吟味していく一つの手段として有効だと考えられる。
筆者らは,再構成型コンセプトマップ作成ソフトウェアを開発している。ソフトウェアの特徴的な機能は,次の2点である。(1)再生機能:コンセプトマップの作成過程を自動的に保存し,作成途中でも随時,その作成過程を再生することができる,(2)修正機能:作成過程の任意の時点までアンドゥすることによって遡り,修正できる。本研究の目的は,小学校の理科授業ヘソフトウェアを導入し,ユーザーインタフェースの有効性や再生機能の内省や対話支援の有効性について実践的に検討することであった。児童39名を対象とした質問紙調査の結果を通して, ソフトウェアの使用感のよさや操作性は高く評価されたことがわかった。また,再生機能の有効性についても,ある程度認められていたことがわかった。教師2名を対象とした面接調査の結果からは, ソフトウェアの再生機能は教師の学習指導や子どもたちの学習を概ね支援できていたと評価されたことがわかった。再生機能利用場面の相互行為分析では,再生機能が子どもたちの学習内容に関わる思考過程の内省や対話を支援していることが授業の文脈に即して例証された。これらの結果を考察することで,本ソフトウェアの実践的な評価や今後の課題が議論された。
実際の使用と同様に空気鉄砲内部を急激に加圧することによって弾に加わる圧力の時間変化を測定し,弾が発射される直前の臨界圧力を求めた。その結果,準静的加圧の場合と比べて急激な加圧の場合の臨界圧力は大きく,銃身の内径(弾の直径)への依存性が異なることが明らかになった。実験結果は,急激な加圧による弾の変形などによって準静的加圧の場合には現れなかった抵抗が弾に働くことを示唆している。
天体現象を科学的に理解するには,多様な視点から総合的に考察する必要がある。本研究では,天体現象を視覚的に捉えるためのモデル教材を地球儀とCCDカメラを用いて製作し,実験授業によりその教育効果を確かめた。この教材によるシミュレーションと実際の観察とを結びつけた学習に発展させるためには,地球儀上での方位と実際の観測時の方位を適切に対応させる必要がある。そこで,方位認識に関する生徒の実態を明らかにするための調査を行った。半数以上の生徒が地球儀上での方位を正確に認識できないことが明らかになった。この実態を改善するために方位認識能力育成のための方略を立て,自作モデル教材を活用した授業を実践した。
今日,理科教育の研究を考えるとき,認知心理学的観点にたち,スキーマ理論を中心に展開されている。しかし,スキーマの脳構造からの実体ははっきりせず,脳科学的な研究が焦眉なものとなってきている。そんな中で,非侵襲的な脳測定のための装置が開発されてきているが,それらの中で比較的測定が容易に使用できる脳波測定による研究が期待される。しかし,脳波は医者の方では重宝されてきたが,教育における認知ということを考えたとき,それが何を測定しているのかあまりはっきりしていない。特に授業やディベートでの相互作用を起こすような場面での使用はされてこなかった。そこに測定されているものは何かという知見がはっきりしていない。そこで,脳部位と思考,身体動作等について理科教材のディベート中の被験者の脳波を測定,検討した結果,それらの関係を実証的に明らかにすることができた。
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