理科教育学研究
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44 巻, 3 号
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原著論文
  • 久保田 善彦, 西川 純
    2004 年 44 巻 3 号 p. 1-11
    発行日: 2004/03/15
    公開日: 2022/06/30
    ジャーナル フリー

    小集団の話し合い活動における科学的意味の構築を,発話の順番取り(Turn-Taking)の視点から分析した研究である。小集団の会話は雑然とし,オーバーラップ発話がよく見られる。これまでの話し合い観では,オーバーラップ発話は,好ましくない行為,学習に適さない行為として否定されてきた。しかし,実際の小集団学習で学習者は,オーバーラップ発話をすることでも科学的意味を構築している。先行発話の意味を受けてオーバーラップする発話を3つに分類すると,「バックチャンネル型」「対立型」「共同型」となる。①バックチャンネル型では,意味の共有や強化が起こる。それによって話し手の発話が,維持・促進される。②対立型オーバーラップは,参加者間の思考の差異を明らかにし,意味の再編の手がかりとなる。③共同型オーバーラップは未完成な発話をつなぐことで,意味を生成していることがわかった。ザトラウスキーが言うように,我々は,話し手と聞き手の二分法から脱し,話し合いを参加者間の「相互作用」とする立場に立っ必要がある。オーバーラップ発話は,話し手と聞き手の区別のない,緊密な相互作用の場になる。今後の学校教育では,オーバーラップ発話を,有効なコミュニケーションスタイルとして捉え,学習をデザインしていく必要がある。

  • 三崎 隆, 西川 純
    2004 年 44 巻 3 号 p. 13-19
    発行日: 2004/03/15
    公開日: 2022/06/30
    ジャーナル フリー

    本研究では観察する際の社会的な状況が変化したときに,場独立型―場依存型の認知型の学習者がどのような観察行動を取るのかについて調査した。学習者の場独立型ー場依存型の認知型のタイプを把握し,それを社会的に再構成して,ランダムに割り振った。この社会的に構成して割り振った認知型を学習者に通知した。そして,学習者に任意の2人組を自由に構成させた。その2人組に,露頭が写った写真4枚を提示し,自由に話し合わせながら写真に写った地層を観察させた。そして,学習者が社会的に構成して割り振った場独立型ー場依存型のどちらの認知型の学習者を選ぶかを分析した。その結果自分の認知型と異なる認知型を選ぶ学習者が多かった。次に,観察時の会話中に現れた指摘の内,最初に指摘した学習者の提示した認知型をカウントし,微視的観察カテゴリー及び巨視的観察の各カテゴリーごとに,学習者の認知型を分析した。その結果,巨視的観察カテゴリーにおいて,社会的に構成した4タイプの認知型の間で有意差が認められた。これらのことから,次のことが明らかになった。・学習者は地層観察を行う際の2人組を作るに当たって,教師に与えられた社会的文脈の中で,提示された認知型と異なる認知型の相手を選ぶ傾向がある。・地層観察の際に,場独立型の認知型の学習者が場依存型として社会的文脈を与えられると,場依存型に特有な巨視的観察カテゴリーに分類される観察事項に着目する傾向を示す。

  • 森川 晋平, 川上 昭吾
    2004 年 44 巻 3 号 p. 21-28
    発行日: 2004/03/15
    公開日: 2022/06/30
    ジャーナル フリー

    河川の汚染の段階をそこに生息する水生生物を用いて判断する方法は現在,国や地方の公共団体,学校現場で幅広く活用されている。これらで使用されている水生生物は主に底生生物である。一方,魚類や藻類,水草,細菌などでの研究も報告されている。本研究ではこの中の魚類に着目し,魚類と水質等の関係を調べ,魚類を加えた河川水質判定方法の開発を行った。基礎調査は2000年7月から9月にかけて愛知県全域の河川32地点で行った。水温,COD,PO4,NH4-N,pH,生物学的水質階級を測定するとともに,魚類を半月網,モンドリで捕獲した。32地点で捕獲できた魚類は27種であった。27種のうち,出現頻度が高かったタモロコ,カマツカ,モツゴ,アブラハヤ,タカハヤ,カワムツ,オイカワ,フナ類,コイ,ドジョウ,ヨシノボリ類で水質との関係を調べた。COD,PO4,NH4-N,及び従来の生物学的水質判定の結果と魚類の調査結果に相関が得られた。このことから魚類は河川の水質の指標生物になりうることが明らかとなった。この調査結果をもとに,アブラハヤ類,カワムツ,タモロコ,ヨシノボリ類,カマツカ,ドジョウ,モツゴ,オイカワ,コイ,フナ類を指標生物とし,それに従来の調査方法で使用されている指標生物から比較的大型なサワガニ,スジエビ,カワニナ,シジミ類,タニシ,モノアラガイ,サカマキガイ,アメリカザリガニを加えた新しい河川環境判定方法を開発した。

資料
  • 舘野 俊之, 清水 誠
    2004 年 44 巻 3 号 p. 29-34
    発行日: 2004/03/15
    公開日: 2022/06/30
    ジャーナル フリー

    本研究は,単元を通して生徒がものづくりを行いながら課題を追究する学習の効果を明らかにすることを目的としている。授業は.中学校第1学年「音」の学習で単元を通してものづくりを行いながら学習を進める群(実験群)と教師が用意した教材を使って学習を進める群(統制群)を設定し実施した。その結果単元を通してものづくりを行いながら進める学習は. 1. 生徒に,より確かに科学概念を構成することができる。2. 学習内容に対する新たな疑問や発展的な疑問を多く見出すことができるといった点で有効であることが分かった。

  • 安藤 秀俊
    2004 年 44 巻 3 号 p. 35-42
    発行日: 2004/03/15
    公開日: 2022/06/30
    ジャーナル フリー

    中学校理科における観察・実験の実施状況を調査する目的で,教科書に記載されている全ての観察・実験の実施状況や実施形態について,中学校の理科教師にアンケート調査を行った。川崎市内の公立中学校51 校の理科教師に,個々の観察・実験について,「説明のみ」「ビデオ」「演示実験」「班別実験」「個人実験」の5段階で選択してもらい, 128 名から回答を得た。1~3学年まで,第1・2分野ごとに全ての観察・実験の実施状況を実施形態別に集計したところ,「班別実験」と「個人実験」を合わせた割合は,化学(78% ),物理(62% ),生物(57% ),地学(32% )の順となり,化学領域において生徒実験の実施率が高かった。また,理科教師の観察・実験の実施状況に関する男女差については,大きな差は認められなかった。年代差については第1分野より第2分野において,その差が表れやすかった。出身大学における専攻差については,学年,第1・2分野によって傾向にばらつきがあり,物化生地の専攻差がはっきりとあらわれなかったが,これは中学での学習内容が基本的であり,かつ四領域全てを指導しなければならないことから,大学での専攻が結びつきにくいためと考えられた。

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