コンピテンシー指向の科学カリキュラム改革が様々に展開されつつある昨今のドイツにあって, そうしたカリキュラム編成の理論的基盤となるコンピテンシーモデルに多くの研究関心が寄せられている。本稿では, ドイツ科学教育におけるコンピテンシーモデル構築の視点について, とりわけ初等・中等教育段階の接続, 一貫性という側面から次の四点を明らかにした。(1)行動に関する次元と内容に関する次元の二つを設定すること。(2)そうした次元について, 初等・中等教育段階に共通する構成要素を設定し, その対応付けを図ること。(3)行動に関する次元においては, 教育段階の進行に伴い, 科学学習一般に通ずるコンピテンシーの規定からより高度な専門性を有するコンピテンシーの規定へと移行していくこと。具体的には, 「認識獲得」領域では, 科学学習の基底をなすような科学の方法に関する幅広いコンピテンシーの規定からより専門特化したコンピテンシーの規定へ, 「コミュニケーション」領域では, コミュニケーション全般に通ずるような基礎的なコンピテンシーの規定から専門用語による教科特有のコミュニケーション様式の習得, 相手に応じたそれらの適用といった側面からのコンピテンシーの規定へ, 「評価」領域では, 科学学習の前提となるような学習そのものに係るメタ認知的なコンピテンシーの規定から科学の多面的理解・社会的能力の育成に係るコンピテンシーの規定へ, とそれぞれ移行していくこと。(4)内容に関する次元においては, 教育段階の進行に伴い, 日常の事例を取り入れたコンピテンシーの規定から専門概念を中心としたコンピテンシーの規定へと移行し, 特に中等教育段階では, 「基本概念」によって, 教科内で習得すべき体系的知識に加え, 教科を越えた知識の関連付けをも考慮すること。
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