本論文では静電気を用いた三種類の実験教材の試作結果について述べている。一つ日は、静 電気と水流の関係を観察する教材である。一時的に帯電状態にした帯電物を用いた場合、瞬間的な観察になり、観察者は現象を見逃す恐れがある。そこで、現象を連続的に観察できるようにするために金属電極と高電圧直流電源を用いた。また、蛇口を使う代わり分液ロートに水道水を貯め、先端のコックを調整することで落下する水の状態を水滴から水流まで変えられるようにした。水は有極性分子なので水流は正電極および負電極のいずれからも引きつけられる。したがって、電極間を落下させた場合、水流の落下位置に近い方の電極の方に水流は曲がる。ところが、電極間のほぼ中央を水流が落下した場合は、これとは異なる動きが見られる。つまり、水流は、いずれかの電極の方に曲がるのではなく、電極間を交互に曲がるようになる。これに伴い、放電が起きる場合もある。二つ目は、水滴を静電気で分裂させる教材である。連続的に水滴を供給できる道具を試作し、それを静電高圧発生装置に装着することでレイリー分裂現象を連続的に観察できるようにした。水滴が熱を使わずに一瞬で無くなることは観察者に強い感動を与える。三つ目は、静電気で煙を取り除く教材(電気集じん器)である。プリント基板、釘、アルミテープを用いて集じん用の電極を試作、煙が静電気によって取り除かれる様子を容易に観察できるようにした。これらの実験教材は、観察者に認知的不調和(驚き、葛藤、協調欠如)の中の驚きを誘発させることを目指して作られたものである。実際に授業やイベントで試作した教材を用いた結果、観察者の多くが驚き・興味を示した。
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