理科教育学研究
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41 巻, 3 号
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原著論文
総説
  • 藤岡 達也
    2001 年41 巻3 号 p. 13-20
    発行日: 2001/03/31
    公開日: 2022/06/30
    ジャーナル フリー

    戦後,最悪の被害を生じた兵庫県南部地震は,防災対策の点で各地の行政等に大きな影響を与えた。本論文では,教育改革の流れの中で,理科教育の立場から震災後の学校教育においての自然災害についての学習や防災教育への取り組みを検討した。特に現在,多くの学校で取り組み始められている「総合的な学習の時間」を踏まえた実践と,自然災害についての学習や防災教育との関連を考察した。改訂された学習指導要領では,自然災害の言葉が強調される箇所が目立つものの,学習内容の全体的な削減から自然災害と関連した自然現象の取り扱われる内容も減少している。一方,防災教育は,「総合的な学習の時間」創設の意義と一致する点も多く,兵庫県南部地震以後,教育委員会,小学校,中学校等で自然災害や防災教育を踏まえた総合学習への取り組みや実践が見られる。加えて,地域の地学的な自然を詳細に取り扱うことによって,地学教育の一層の充実も可能となる。「総合的な学習の時間」の中で,自然災害についての学習や防災教育を行うことは,探究的な活動や体験的な活動を伴った理科学習としての発展も期待され,一部に危惧されている学力低下の懸念を払拭できる可能性もある。

資料
  • 小林 丈芳, 跡部 紘三, 松川 徳雄, 福岡 登
    2001 年41 巻3 号 p. 21-30
    発行日: 2001/03/31
    公開日: 2022/06/30
    ジャーナル フリー

    原子カ・放射線教育の在り方を考えていくために,地域の生活環境が青少年の原子力等の知識やイメージにどのような影響をもたらすかを明らかにする目的で,徳島県と原子力発電所のある福井県敦賀市の中学生・高校生を対象に「エネルギー・原子力等に関するアンケート調査」を行なった。その結果,彼らの原子カ・放射能・放射線に対する知識やイメージ等に関して次の点が明らかになった。(1) 現代社会において,徳島県の生徒は「火力」,敦賀市の生徒は「原子力」を最も重要なエネルギー資源と考えているのに対し,21世紀の社会では両地域の生徒共に「太陽熱・太陽光」を重要であると考えている。(2) 両地域の生徒の多数が原子カ・放射能・放射線についての知識をマスメデイアから得ている。徳島県の生徒は「中学校」,敦賀市の生徒は「博物館・展示会」「家庭」から得たと回答した割合が高い。(3) 原子カ・放射能・放射線の知識に関して,徳島県の生徒は「原子爆弾」,敦賀市の生徒は「原子力関連施設」や「核燃料」に関連した用語や知識の回答が多い。また,敦賀市の生徒は,原子力等に対して「危険」とイメージする傾向にある。(4) エネルギー資源として女子は「太陽熱・太陽光」を重要であると考えている。また,原子力等の知識やイメージにおいて,男子は「危険」, 女子は「原子爆弾」「有害」「恐い」「レントゲン」などを回答する傾向にある。これらの要因として,男女の知識量や感性の違い,胎児への悪影響に対する意識の違いなど教科教育以外の要因が考えられる。(5) (2)(3) より,知識の習得に関して,徳烏県の生徒は中学校における平和学習,敦賀市の生徒は自治体や企業による啓発活動の影響を強く受けているものと考えられる。

  • 三崎 隆
    2001 年41 巻3 号 p. 31-39
    発行日: 2001/03/31
    公開日: 2022/06/30
    ジャーナル フリー

    本研究では,着目されにくい傾向にある観察の視点を教師が直接指示して観察させる指導法と,着目傾向の異なる生徒同士を組にして自由に話し合わせながら観察させる指導法との教育効果を比較検討した。教師が直接指示する指導法を行った調査1では,まず, EFT検査を実施して場独立型と場依存型とに分け,着目傾向を把握した。そして,着目傾向の異なる生徒に対して,着目されにくい観察視点を教師が直接指示し,個別に自由に観察させて気付いたことを記述させた。自由に話し合わせる指導法を行った調査2では, EFT検査を実施して場独立型と場依存型に分けた後,着目傾向の異なる場独立型の生徒と場依存型の生徒を2人組にして,指示は何も与えずに自由に観察させて気付いたことを記述させた。両調査での記述内容を,それぞれ12のカテゴリーに分類し,その結果を比較した。その結果,傾斜・褶曲及び断層のカテゴリーについて,話合いを促した調査2の方が指摘が多かった。したがって,着目傾向の異なる生徒同士を2人組にして自由に話し合わせながら観察させる指導法が,着目されにくい視点を教師が直接指示する指導法より,教育効果を期待できることが明らかになった。

  • 石井 俊行, 橋本 美彦
    2001 年41 巻3 号 p. 41-48
    発行日: 2001/03/31
    公開日: 2022/06/30
    ジャーナル フリー

    本研究によって,「光に関する総合問題」を解決する上で,光の基礎的知識の内容を十分に理解していることが必要であることが分かった。また,生徒が光の学習を難しいと考える理由は,「実像などの大きさや位置が物体を置く位置によって変化する」,「光線の進み方が分からない」,「作図が分からない」からであった。さらに「光に関する総合問題」と作図を完成する能力との間にはかなりの相関があることが分かった。作図を完成する能力は,凸レンズを通過した光が作る像を正確にイメージできなければ正答できないため,「光に関する総合問題」を解決する上で重要である。このため,生徒の凸レンズを通過した光が作る像に関する理解を深めさせるには,現在軽視されている作図の指導を授業に積極的に取り入れて,幾何学的に頭の中で図形を操作したり,イメージをしたりする抽象的な思考能力を高める必要がある。

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