理科教育学研究
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47 巻, 2 号
選択された号の論文の9件中1~9を表示しています
原著論文
  • 大黒 孝文, 稲垣 成哲
    2006 年 47 巻 2 号 p. 1-12
    発行日: 2006/11/30
    公開日: 2022/06/30
    ジャーナル フリー

    近年,理科教育において、生徒の学びの場に生じる対話が注目されており,そこで生起する相互作用や概念の変容を協同学習の中で実現しようとする研究がなされている.しかし,学習効果としての生徒たちの実験技能の習熟や理解度に関する研究は,ほとんどなされていない。そこで本研究では,ジョンソンら(1998)の提唱する協同学習の基本的構成要素を取り入れた実験授業を計画し,その学習効果を検討することにした。実験授業は,中学校2年生を対象にして,化学分野と気象分野の2つの単元において,協同学習の基本的構成要素を導入した実験群とそれを導入していない対照群を設定して実施した。その結果,実験群においては,対照群に比べて,次のような学習効果を確認することができた。(1)実験操作上の誤操作や器具の破損が減った。(2)学習内容の単元直後の理解度は対照群と変わらなかったが,1ヵ月後の定着が高まった。(3)実験に取り組む姿勢として,対話やアドバイスが重要であると認めるなどの変容が見られた。以上の結果から,ジョンソンら(1998)の提唱する協同学習の基本的構成要素を取り入れた授業の有効性が示唆された。

  • 大澤 力
    2006 年 47 巻 2 号 p. 13-20
    発行日: 2006/11/30
    公開日: 2022/06/30
    ジャーナル フリー

    幼児の発達において自然体験は不可欠である。近年,身近な自然体験の場としてビオトープが注目されている。しかし,幼児教育における活用はまだ進んでいない。そこで,幼児がビオトープに関わる場面を通年で観察し,そこにおける自然体験が幼児の発達にどのような影響を与えているのかを「原体験の対象となる自然物・関与する感覚・情緒,認識体験・原体験・教育効果といった構造モデル」を通して構造的に把握検討し,幼児の発達にとって望ましい自然体験のあり方を考察することが本研究の目的である。その結果,科学する心の育ち・自然を大切にする心の育ち・心の癒し・意欲の向上といった教育効果が得られることが把握された。さらに,望ましい自然体験のあり方に関しては,①室内外の教育環境を相補的・統合的に展開する②「空・天候・気候」を原体験の一類型とする自然体験に関与する感覚(感覚器官)の幅を広げる工夫をすることなどを提案した。

  • 杉本 剛
    2006 年 47 巻 2 号 p. 21-29
    発行日: 2006/11/30
    公開日: 2022/06/30
    ジャーナル フリー

    協同的な学習に取り組んでいる生徒を対象として,自己主体的な学習場面と友達との相互協力的な学習場面についての生徒の意識の関連を明らかにすることを目的として質問紙調査を行った。その結果,学習場面の多い・少ないとその学習場面で考えが深まる・変わる事があるとの間には,学習場面によって相関関係の強さに差が見られた。例として,自己主体的な学習場面では実験の結果わからない事を自分が本やインターネットを使って調べること,相互協力的な学習場面では実験の結果友達のわかった事を聞くことなどの学習場面で,学習場面の多い・少ないとその学習場面で考えが深まる・変わる事との間に中程度の相関が認められた。また,考えが深まる・変わる事について,自己主体的な学習場面と相互協力的な学習場面の問には学習場面によって相関関係の強さに差が見られた。例として,実験をする学習場面,実験の結果わかった事を考える学習場面,実験の結果をまとめる学習場面で,考えが深まる・変わる事について,自己主体的な学習場面と相互協力的な学習場面の間に強い相関が認められた。

  • 高垣 マユミ, 森本 信也, 加藤 圭司, 松瀬 歩
    2006 年 47 巻 2 号 p. 31-39
    発行日: 2006/11/30
    公開日: 2022/06/30
    ジャーナル フリー

    本研究では,小学校5年「ものの溶け方」の理科授業において,子どもたちが主体的にコミュニケーション活動に参加する「社会的な学び」の場を構成するために,「電子黒板」を支援ツールとして導入することを試みた。具体的には,1.子どもたちのアイデアを分類・整理する場としての対話ボード,2.子どもたちのアイデアを交換する場としての対話ボード:(1)絵図掲示を使った情報交換,(2)協同作業を行う情報交換,3.操作説明の情報伝達,の観点から理科授業における電子黒板の果たす役割を検討した。その結果,電子黒板は,子どもたちの探究過程に沿いながらリアルタイムに話し合いを焦点づけたり,個々人の多様なアイデアやデータを柔軟に扱いながら科学的概念の協同構築を促すことが確認された。

  • 益田 裕光
    2006 年 47 巻 2 号 p. 41-49
    発行日: 2006/11/30
    公開日: 2022/06/30
    ジャーナル フリー

    中学校学習指導要領解説理科編,大項目「電流とその利用」では,電流の正体を自由電子の流れとして扱わなくなった。そこで,教科書には,電流および電圧を水流やその落下で喩えるモデルが掲載されるようになった。本研究は.理科授業を通し,水流モデルから電流回路を類推する中学生の実態に基づき,中学生が科学的に類推できるようになる方略について考察した。その結果,学習の初期において,対象レベルの類似に基づく類推を行う中学生が多く存在した。このように類推した中学生を対象に,「『抵抗』と『電流』の関係」や「『電源』と『定常流』の関係」など,ターゲットドメインどうしの関係を類推させる方略を用いることで,水流モデルから電流回路を科学的に類推できる中学生が現れるようになった。

  • 森本 信也, 甲斐 初美, 森藤 義孝
    2006 年 47 巻 2 号 p. 51-64
    発行日: 2006/11/30
    公開日: 2022/06/30
    ジャーナル フリー

    本研究においては,科学概念の変換過程について,中学生における進化概念の変換過程を事例として,I〜IIIの側面の存在を検証した。I:外延の拡大。II;学習者のメタ認知に基づく概念構築(conceprion)。III;内包の変換と概念変換の自覚。I〜IIIの過程において,II〜IIIの過程が科学概念変換の中心となることが明らかになった。この過程を促進するために,教授・学習過程の構築において,ハシュウェー(Hashweh, M.Z.)の指摘する「画定(demarcation)」への着目が必須であることを実証した。

  • 山下 修一, 西山 宜孝
    2006 年 47 巻 2 号 p. 65-74
    発行日: 2006/11/30
    公開日: 2022/06/30
    ジャーナル フリー

    中学校3年生48名を対象にして,男女2名ずつの4名1班を組み,5時間の酸化還元学習に酸素との化合のしやすさを示す「化合力」を用いて,一貫して説明することを促した。そして,様々な酸化還元の事象に対して「化合力」を適用して説明できるようになるのかを探った。その結果,事後調査で未習課題「たたら製鉄」の説明にも「化合力」を適用し,2ヶ月後の遅延調査では「化合力」を用いた説明の割合が増加(事後44%→遅延60%)した。さらに.一貫して説明している群(29名)と非一貫群(19名)を比較し,一貫群では2ヶ月後でも「課題に対する説明の正答率」や「理解が深化したという認識」が保たれていたことを明らかにした。

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