近年, 児童・生徒が観察・実験の計画を考案することに課題のあることが指摘されている。しかし, この課題は, 観察・実験の計画そのものにあるのではなく, それに先立つ観察・実験に見通しをもたせる段階, つまり仮説の設定に関わる指導に, 根本的な原因があることを示しているものと考えられる。
そこで, 科学における発見的・創造的文脈において重要とされる推論の様式であるアブダクションに着目し, 児童・生徒自ら仮説を設定させる指導の方略として開発された, The Four Question Strategy(4QS)について, 独立変数の抽出から仮説の設定に至る推論の過程を検討した。
その結果, 従属変数に影響を及ぼす独立変数の抽出の過程はアブダクションによる推論であり, それらの独立変数について実験結果を見通す検討を加え作業仮説を設定する過程は, 演繹であると考えられた。また, パースの提唱したアブダクションによる推論や演繹的な推論と, 4QSを用いて仮説を設定する際の推論の過程を対応させて指導を行うことで, 4QSが推論の能力を育成する方略として機能する可能性のあることを示した。
抄録全体を表示