理科教育学研究
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40 巻, 2 号
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原著論文
  • 藤岡 達也
    1999 年 40 巻 2 号 p. 1-12
    発行日: 1999/11/30
    公開日: 2022/06/30
    ジャーナル フリー

    本研究ではこれまでの理科教材としての河川の取り扱いや教育研究を展望し,日本の理科教育における水害と河川堆積物に関する問題点を再考した。まず,堆積物としてはむしろ砂質の堆積物が,沖積平野の形成や治水の観点等に大きな意義をもつにも関わらず,戦後,特に昭和30年代以降,礫についてのみが河川の取り扱いや河川教材研究の中で多く見られた。堆積構造から地層の形成過程や古環境を推定する研究手法は,現在の地質学において著しく発展している。一方これまでの理科教育では堆積学の知見が十分取り入れられていない。本論文では河川堆積物に留意した明治時代のデレーケの治水事業についても触れた。近代日本が治水を通して河川に注いだ莫大なエネルギーは,明治の理科教育に,十分取り入れられたとは言えない。しかし,棚橋・樋口の「小學理科教科書」に見られたように必ずしも明治の教科書で水害が考慮されていなかったとは言いがたい点もある。確かに木谷が論じているように河川教材についても歴史的考察,例えば上流,下流一体としての視点からの取り組みは理科教育の中で少ない。しかし,戦中戦後,昭和20年代ではこの観点は含まれていた。河川についての内容は,近年削減される一方であり,水害・治水の観点からの河川の取り扱いは,戦後の一時期を除いて理科教育の中で欠如していたとすら考えられる。環境教育などが重視されているにも関わらず,水害・防災教育が近年の埋科教育で取り扱われてこなかった点も第3回国際調査の結果に現れたと言える。

  • 磯崎 哲夫
    1999 年 40 巻 2 号 p. 13-26
    発行日: 1999/11/30
    公開日: 2022/06/30
    ジャーナル フリー

    本小論は,科学(理科)教育の存在意義と価値について,科学及び科学教育に対する国家の態様が,わが国とは対照的であったイギリスを取り上げ,科学が学校教育に導入されるようになった19世紀,とりわけ中期以降の論議について考察した。その際,以下の3点を考察の視点として設定した。①誰の科学教育思想が学校カリキュラムに反映されたのか。②科学教育の目的・目標論は如何にして設定されたのか。③科学教育と技術教育はどのような関係にあったのか。

  • 松森 靖夫
    1999 年 40 巻 2 号 p. 27-39
    発行日: 1999/11/30
    公開日: 2022/06/30
    ジャーナル フリー

    本研究の主目的は,以下の3点である。(1)命題の科学的真偽を判断する際に,子どもが用いる命題論理について把握する。(2)子どもなりの命題論理に適合した真偽法による評価シートについて提案する。(3)提案した真偽法(評価シート)の活用可能性などについて検討を加える。そして,以下のような知見を得たので報告する。(1)自然の事物現象に言及する命題の真偽を判断する際,子どもなりの多様な命題論理(真・偽以外の新たな真理値を設定する“子どもの多値論理学”)の適用が想定されること。(2)コメット法(“子どもの命題論理学”に適合した“多値真偽法” )による評価シートを開発したこと。具体的には,(「そう思う」・「そう思わない」・「分からない」・「ほかの考え( )」という四つの真理値で構成される評価シートである。(3)提案した評価シートは,理科教育実践において活用可能であると考えられるが,解決すべき課題(命題文の表記の問題など)も想定されること。

  • 萩原 浩, 西川 純
    1999 年 40 巻 2 号 p. 41-50
    発行日: 1999/11/30
    公開日: 2022/06/30
    ジャーナル フリー

    最近の認知心理学によれば,学習転移は起きにくいと言われている。また,我々の今までの研究から,児童は生物学的内容を過小般化する傾向があり,その際,教材との類似性の影響を強く受けることが確かめられている。そこで本研究は,小学校生物(動物)領域における学習内容の転移状況から,その問題点を改善するために二つの授業方略を提案し,その有効性を検討した。まず,教育現場では転移を促すために数多くの教材を提示することから,「ウサギは○○があります。××はどうですか?」という問題で,教材を数多く提示する効果を検証した。その結果,「ウサギとメダカは動物である。だから○○する」というカテゴリーによる推論ができないと転移を促す上であまり効果が認められないことが明らかになった。次に,小学校5年「生命のつながり」の学習において,児童に教材と既知の生物が同一カテゴリーであることを認識させた。その結果,カテゴリーによる推論を行う児童が増加し,表面的な類似性を越えて転移が促進されることが明らかになった。

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