動物臨床医学
Online ISSN : 1881-1574
Print ISSN : 1344-6991
ISSN-L : 1344-6991
20 巻, 1 号
選択された号の論文の5件中1~5を表示しています
Case Report
  • 今本 成樹, 渡邊 將人, 射場 満, 今本 三香子, 梅山 一大
    2011 年 20 巻 1 号 p. 1-5
    発行日: 2011/03/20
    公開日: 2012/04/04
    ジャーナル フリー
    犬の毛色には複数の遺伝子が関与している。毛色に関与する遺伝子が複数確認されており,犬種によっては,毛色関連遺伝子の遺伝子検査も実際されている。将来的には遺伝子検査を用いることで,望んだ毛色を高い確率で作り出すことが可能となるであろう。
     毛色に関与する遺伝子の一つであるSILVPmel17)遺伝子に対して短い分散型核内反復配列(short interspersed nuclear element;SINE)挿入が起こることで大理石模様の個性的な毛色を作り出す。一方で眼疾患,難聴等の身体的異常をしばしば引き起こす毛色であることも知られている。しかしながら外観だけでは判断できない隠れマールと呼ばれる個体がいることが知られている。
     隠れマールは意図しない仔犬を作り出す原因となってきた。今回我々は,表現型としてマールの毛色を有していない雑種犬に対して眼底検査を実施し,SILV遺伝子へのSINE 挿入を持つ犬に特有の眼底所見を得た。そこで,この犬から遺伝子を採取し遺伝子検査を実施したところ,SILV 遺伝子へのSINE 挿入が確認された。マール因子を確認するためには,眼底検査と遺伝子検査の併用は強力な診断ツールとなる。
  • 中道 潤, 安川 邦美, 田端 克俊, 森下 啓太郎, 福井 健太, 植野 孝志, 下田 哲也
    2011 年 20 巻 1 号 p. 7-11
    発行日: 2011/03/20
    公開日: 2012/04/04
    ジャーナル フリー
    動脈管開存症(PDA)による重度の心不全の犬において,貧血と血小板減少症および脾臓の腫瘤病変が認められた。内科治療により心不全の改善を図った後,脾臓摘出術を実施した。術後一旦全身状態は改善したが,貧血,血小板減少症,低アルブミン血症,肝不全,腎不全が進行し死亡した。病理組織学的検査により血球貪食性組織球肉腫と診断した。本症例の貧血および血小板減少症の原因は,脾臓の腫瘍組織における細血管障害性溶血性貧血と腫瘍細胞の血球貪食によるものとが考えられたが,脾臓摘出後も貧血および血小板減少症が進行したことから,腫瘍細胞による貪食が血球減少の主な原因であると考えられた。
  • 松本 郁実, 高島 一昭, 山根 剛, 山根 義久, 岡野 司, 淺野 玄
    2011 年 20 巻 1 号 p. 13-17
    発行日: 2011/03/20
    公開日: 2012/04/04
    ジャーナル フリー
    (財)鳥取県動物臨床医学研究所は鳥取県中西部において保護される傷病野生鳥獣の治療を行っており,今回過去10年間に搬入された傷病野生鳥獣のうち,タヌキに注目して疥癬罹患状況の調査を行った。タヌキの保護要因としては,交通事故が原因と思われる骨折や外傷が多くみられたが,疥癬に罹患したタヌキも2003年に初めて搬入され,その後も2005年2頭,2006年5頭,2007年4頭,2008年2頭の計14頭が搬入された。月別でみると,タヌキの搬入頭数は3月と9月に多く認められたが,疥癬罹患タヌキはそれらとは少しピークがずれた晩春や秋から冬にかけて搬入された。また,岐阜大学応用生物科学部の野生動物管理学研究センターに搬入された疥癬罹患タヌキの傾向と比較したところ,当研究所および岐阜県の当該施設において,搬入された疥癬罹患タヌキは2008年までは似た形で推移した。
  • 小川 純也, 小川 浩子, 福山 泰広, 長谷川 剛, 下江 弘美, 平松 佳子, 栢森 康司
    2011 年 20 巻 1 号 p. 19-23
    発行日: 2011/03/20
    公開日: 2012/04/04
    ジャーナル フリー
    犬前十字靱帯断裂に対して脛骨粗面を前方に転位することによる膝関節の安定ができるTTA手術は,その手術手技が比較的簡単で,そのうえ術後の成績も安定しているため今現在では世界中で行われるようになっている。その一方で本邦ではまだあまり一般的には行われていない。本院では,約7年前,まだこの手術法が確立する前からこの手術を始める機会を得られ,その結果数例においてではあるが術後の合併症を経験し,その発生の原因の究明や予防に努め,今現在では安定した手術結果を納めている。今回は,本院における全ての手術成績と合併症を示しその原因と対応を紹介する事で,今後日本においてこの手術を始める時の礎となることを期待している。
  • 矢吹 淳, 小出 和欣, 小出 由紀子
    2011 年 20 巻 1 号 p. 25-29
    発行日: 2011/03/20
    公開日: 2012/04/04
    ジャーナル フリー
    10歳齢のゴールデン・レトリバーが3日前からの食欲低下,嘔吐および白色の下痢を主訴に来院し,各種検査の結果,総胆管閉塞が疑われた。入院にて3日間の内科的治療を行ったが,改善が認められず,CT検査後に外科的治療を行った。CT検査では胆嚢頸部に結石を認めた。開腹手術にて胆石を摘出し,胆嚢切除を行ったが,大十二指腸乳頭部に炎症ならびに狭窄が認められたため,総胆管ステント留置術を実施した。術後,速やかに黄疸は改善され,術後32日目に内視鏡検査を行い,鏡視下にてステントを抜去した。ステント抜去後の経過も良好で,術後1261日に別疾患で死亡するまで閉塞性黄疸の再発は認められなかった。本症例より,総胆管ステント留置術は,短期的な胆汁流出路の確保が必要な症例に対して有用である可能性が示唆された。
feedback
Top