応用統計学
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51 巻, 1-2 号
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研究ノート
  • 佐藤 健一
    原稿種別: 研究ノート
    2022 年 51 巻 1-2 号 p. 1-18
    発行日: 2022年
    公開日: 2023/01/12
    ジャーナル 認証あり

    本稿では経時測定データからなる観測行列を個体ごとの観測時点別頻度表とみなして,非負値行列因子分解にもとづくトピックモデルを適用し,経時変化の類似性を探索するためのソフトクラスタリングを考える.また,非負値行列因子分解には,個体ごとの観測データをいくつかの基底ベクトルの線形一次結合で近似する回帰モデル的な側面もある.解析例として,個体数よりも観測時点数が少ない通常の場合に加えて,回帰分析などが困難な個体数よりも観測時点数が多い場合についても紹介する.さらに,解析例からトピック確率が時間や空間上で緩やかに変化する傾向が見られたため,非負値行列因子分解の係数行列に変化係数の導入を試みた.その結果,観測行列に含まれない位置情報を用いて,経時測定データの予測が可能となった.

  • 小池 宏明
    原稿種別: 研究ノート
    2022 年 51 巻 1-2 号 p. 19-29
    発行日: 2022年
    公開日: 2023/01/12
    ジャーナル 認証あり

    Evidence-based medicineは,昨今,臨床医学の意思決定の重要な根拠となってきていますが,それは二重盲検プラセボ対照試験の統計学的解析に基づいています.そして,近年,その解析にはCox比例ハザードモデルが用いられ,それにより臨床試験の参加者のヘテロジェネイティーの相違が,より詳細に解析結果に反映されるようになってきました.それにも拘らず,通常,ある試験で有意差をもって治療効果が認められた場合には,その試験と同様な患者群に普くその治療が行われています.

    しかし,その有意差が,その群の中の一部のみにその効果がもたらされた事,すなわち,レスポンダーの存在に由来する可能性は常にあり,しかも,ヘテロジェネイティーは全て既知の危険因子などから構成されているため,レスポンダーの存在が未知の交絡因子に由来している場合,通常のサブグループ解析ではその存在が不明なまま残ることになります.

    この論文は,レスポンダーの存在の有無を,赤池情報量規準(AIC)を用いて推定する方法を提案したものです.ただし,ここでは,治療群及びプラセボ群をセットとした統計量にそれを用いるためにひと工夫を要しました.

フォーラム
  • 永田 靖
    原稿種別: フォーラム
    2022 年 51 巻 1-2 号 p. 31-42
    発行日: 2022年
    公開日: 2023/01/12
    ジャーナル 認証あり

    2022年1月29日に開催された「応用統計学会フロンティアセミナー,応用統計学の過去,現在そして未来へ」で講演した内容について報告する.

    本稿では,本テーマを講演することに決めた経緯を述べたうえで,多重比較法の基本的な考え方について歴史的な観点からまとめる.

  • 岩崎 学
    原稿種別: フォーラム
    2022 年 51 巻 1-2 号 p. 43-54
    発行日: 2022年
    公開日: 2023/01/12
    ジャーナル 認証あり

    昨今,統計・データサイエンスが大いに広がりを見せ,データ分析に携わる人々の数も増加しつつある.その中で,統計学の教育や訓練がやや不足がちの人たちもいることから,「因果」と「相関」について,特に回帰分析の枠組みで考える.また近年,オープンデータの利活用が話題となっている.この種のデータの特徴は,集計データであることである.

    そこで,集計データから個人の行動を推論する方法論としてのエコロジカルインファレンスが重要性を帯びてくる.本稿では,身近な例を取り上げ,それらの分析結果を提示すると共に,その解釈について詳しく議論する.特に,回帰分析の3つの役割である「記述」,「予測」,「制御」の違いを明確にすべきであることを強調する.また,それらのデータは集計データであることから,エコロジカルインファレンスのいくつかの技法を適用した結果も示す.例を2つ示したが,それらは全く同じ数値でありながらコンテクストが違うものである.したがって,解析の数値的な結果は全く同じであってもその解釈が異なっている.

    本稿で伝えたいメッセージの第一は,データは数値と背景情報からなることという認識である.コンピュータのできるのは「数値解析」であり,「データ解析」を行うためには背景情報を十二分に吟味しなくてはいけないことを改めて伝えたい.

  • —アメリカの統計家とデータサイエンティスト育成から学ぶべきこと—
    椿 広計
    原稿種別: フォーラム
    2022 年 51 巻 1-2 号 p. 55-61
    発行日: 2022年
    公開日: 2023/01/12
    ジャーナル 認証あり

    本稿では,米国の統計エキスパート人材社会進出の状況やカリフォルニア大学バークレー校の統計エキスパート人材育成,特にデータサイエンスの学部・大学院教育を紹介し,日本で2021年に開始された,大学統計教員育成を含む「統計エキスパート育成事業」に必要な視点を示す.

名誉会員エッセイ
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