望目特性ロバストパラメータ設計において,効果を減衰したい要因を実験要因として割り付けずに共変量として観測する場合の設計手順を提案する.いくつかの研究がこの設定を扱っているが,既存の研究は機能性の測度を定義せずに,正規線型モデルの誤差項の正規性にもとづいた検定のみを考えている.それに対して我々は,有界な非線型函数を用いることによって自然な形で調合誤差因子実験に対応したsignal-to-noise ratioを定義し,それにもとづいた設計法を与える.また,モデルの誤差項に正規分布を仮定せず,パラメータの最小自乗推定量の漸近正規性に基づいた検定を考える.
マハラノビス・タグチ(MT)法はタグチメソッドの代表的手法の一つであり,異常検知やパターン認識のための基本的な多変量解析法として普及している.特に近年では,センサーから取得されたデータをもとに設備機器の運転状況を監視する目的でMT法が適用された事例も報告されている.しかし,一般にセンサーから取得されたデータはノイズを伴って観測されるため,学習データから本質的な相関構造を推定することが難しい.
そこで,本論文では,センサー・データのようなノイズを伴って観測されるデータから本質的な相関構造を推定するため,MT法にガウシアン・グラフィカル・モデリングに基づく正則化のプロセスを導入することを提案する.提案プロセスでは,従来のMT法が精度行列に基づいて相関構造を推定することに着目する.そして,その行列の非対角要素の大半をゼロの値に置き換えることで推定すべきパラメータ数を削減し,本質的な相関構造を精度よく推定することが期待できる.本論文では,UCI機械学習レポジトリで公開されているデータの解析を通じて,提案プロセスの特徴と有用性を示している.また,モンテカルロ・シミュレーションを通じて,精度行列の非対角要素が厳密にゼロの値をとらない場合でも,センサー・データのようなノイズを伴って観測されるデータならば,学習データから本質的な相関構造を精度よく推定できることを実験的に示している.