応用統計学
Online ISSN : 1883-8081
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48 巻, 3 号
選択された号の論文の4件中1~4を表示しています
研究論文
  • 川野 秀一, 村田 右富実
    原稿種別: 研究論文
    2019 年 48 巻 3 号 p. 45-57
    発行日: 2019年
    公開日: 2020/04/21
    ジャーナル フリー

    万葉歌の研究において,歌の音の使用傾向から歌人の特徴を捉える場合がある.それぞれの歌人の使用している音の癖を読み取ろうとするものである.しかし,これまでは歌内で多く使用されている,もしくはほとんど使用されていない単一の音のみに着目した単変量的な解析や主観的な判断がほとんどであった.本論文では,複数の音を考慮に入れた統計解析を実行し,歌人の分類ならびにその音に基づいた特徴付けについて考察する.具体的には,まず,柿本人麻呂,山上憶良,大伴旅人の3歌人の短歌に着目し,各短歌内で使用されている音節から特徴量を作成する.その後,得られたデータに対してスパース正準判別分析を適用することにより,歌人の分類と各歌人に特徴的な音節の選択を行う.

  • 崎濱 栄治, 川崎 泰一, 本橋 永至
    原稿種別: 研究論文
    2019 年 48 巻 3 号 p. 59-70
    発行日: 2019年
    公開日: 2020/04/21
    ジャーナル フリー

    インターネット広告配信においてクリック率(CTR: Click-Through-Rate)の予測は最も重要な問題の一つであり,広告配信に関わる企業にとって収益に直結するテーマであることから,膨大な研究が行われている.既存研究では,CTRの予測精度向上に主眼が置かれ,特徴量の追加や加工方法,深層学習の活用など様々な取り組みが行われている.一方,広告画像の構成要素そのものの制作については,デザイナーの経験に依存する部分が大きい.クリエイティブを制作する際にどのような要素が重要であるか,指針となるエビデンスがあれば,より効率的に制作作業に取り組める可能性がある.本研究では,モバイル広告を対象としたCTR予測問題の枠組みで,広告画像における構成要素の貢献度を測定する実証分析を行った.広告画像の構成要素の抽出には,コンピュータービジョン技術を活用し,人が解釈可能なキーワードや色彩情報を得た.CTR予測の学習器として,弱識別器に決定木を用いたGBDT(Gradient Boosted Decision Trees)の結果から各特徴量の重要度と交互作用を推定し,広告画像の中でクリックに対して有効な要素を特定した.交互作用の推定は,Deng (2019)によるInterpretable Trees(inTrees)を利用した.コンピュータービジョン技術と,特徴量の重要度と交互作用が推定可能な機械学習手法を組み合わせることで,広告画像の構成要素の抽出とその貢献度測定が可能となり,幅広い応用範囲が期待できる.

  • 加藤 拓巳
    原稿種別: 研究論文
    2019 年 48 巻 3 号 p. 71-83
    発行日: 2019年
    公開日: 2020/04/21
    ジャーナル フリー

    品質は,材料特性や製造技術等の客観的な要素と,美しさや心地よさ等の主観的な要素に分けられる.後者は,知覚品質と呼ばれ,近年は機能的な要素以上に重要視されている.自動車業界でも,知覚品質は大きな競争力の1つになっている.しかし,知覚品質の重要性は広く認識されながらも,主観的であるがゆえに,定量的な効果の推定は不透明なままであった.そこで,本研究の目的は,車のエクステリアの知覚品質が顧客の支払意思額に与える影響を評価することである.知覚品質の要素は,色,素材,仕上げのうち,これまで取り上げられた例の少ない仕上げを対象とした.仕上げは,「見切り線の有無」と「合わせ幅」の2つとし,同じスタイリングでありながら仕上げレベルが異なる2つの車を用意し,ランダム化比較試験によって検証を行った.ランダム化比較試験を行うにあたって,単純ランダム化で2群に割り当てた後,事前のリクルーティング調査で聴取した性別,年齢,世帯年収,保有メーカー,運転頻度,情報接触頻度等の項目で,各群の同質性を確認した.支払意思額は,仮想市場評価法の自由回答方式で聴取した.得られた支払意思額をブルンナー・ムンツェル検定で評価した結果,2つの車の間での差は有意となった.統計的な手法による定量評価は,商品の機能的な要素に着目されることが多いが,デザインの仕上げという感覚的な要素でも支払意思額という消費者視点で評価が可能である.

総合報告
  • 熊澤 蕃
    原稿種別: 総合報告
    2019 年 48 巻 3 号 p. 85-94
    発行日: 2019年
    公開日: 2020/04/21
    ジャーナル フリー

    混成対数正規分布(熊澤, 大橋, 1986)は,対数正規分布で予測されるより高い値の出現頻度を抑制するメカニズムの存在によって生成される確率分布である.これは,対数正規分布の本体と正規分布の右端を持つ分布であり,放射線作業に伴う線量累積を合理的に抑制する確率過程のリスク管理モデルとして導出された.同様の確率分布は,自然現象,工学,経済学,文化,スポーツ,社会統計で広く見られる.本論文では,混成対数正規分布の生成機構「量の増加抑制の合理的調整」を普遍的なリスク管理式として解釈,また,この管理式からのリスク出力は対数成分と線形成分の混成変動になることを前提にして,混成目盛(対数目盛と線形目盛の統合)および両軸に混成目盛を持つ2次元の両混成グラフ用紙上で混成変動を同定する考え方と適用例を示した.適用例では,両混成グラフ用紙上で直線グラフを与えるハイブリッドスケール(HS)モデルを用いて,核の構造安定性に関する(クーロン反発力源の)陽子数を超える(核力引力源の)中性子過剰数が線量管理から導出したリスク管理式と同じく増加抑制機能を示すことを検証した.

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