被爆者の胃癌データ解析に当ってはCox比例ハザード法と三つの統計学的方法とを比べて,一つの有効な方法を決めた.ここで検討した三つの方法とは,いずれも観察人年数に基づいたものである.すなわち,胃癌症例数が独立な多項分布に従うとする1)一般的層訂正法,及びボアソン分布を仮定して,随伴する要因をモデル化した2)加算的ハザード法と,3)指数加算的ハザード法などである.方法1)は,放射線誘発癌リスクとしての回帰のパラメータ推定には安定しているが,2)は不安定である,特に3)の回帰推定値は,Coxのそれと比べて極めてよい近似を与える,興味ある点は観察人年数を用いた胃癌データへのグループハザード解析の有効性が数値的検討によっても示唆される.この方法の有効性の詳細についてはStewartら[13]を参照されるとよい.このグループ解析法の特徴はCoxの部分尤度法の複雑さを避けると同時に,多くの観測値にタイが認められる場合の近似法にもよらず,標準的尤度法によって応用する点にある。更に,分割表による解析は観測値と期待値との関係からデータの特性が比較的に理解し易い.
方法3)ではGLIMを用いてパラメータは容易に推定される.したがって,方法3)によって,胃癌データの線量と時間との関係を検討した.この結果は線量と時間との交互作用によるリスクの増加は認められず放射線誘発胃癌リスクと時間リスクとの間は加算的であることが認められた.
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