応用統計学
Online ISSN : 1883-8081
Print ISSN : 0285-0370
ISSN-L : 0285-0370
5 巻, 3 号
選択された号の論文の3件中1~3を表示しています
  • 増山 元三郎
    1976 年 5 巻 3 号 p. 95-114
    発行日: 1977/03/30
    公開日: 2009/06/12
    ジャーナル フリー
    同じ薬を同じ量だけ飲んでも同時に同じ効果が現われるとは限らないし,同じ汚染源の近くに住む人たちが同じ害作用を受けるとも限らない.世間ではこれを個体差があるからと説明する.この報告では,生化学的個体差を体液中の物質の濃度Cの対数尺上での標準偏差σxで表現したとき,これに関してどんな通則が成り立つか,その根拠は何かについて筆者の調べた結果を述べる.
    まず古典的な代謝方程式を基に,大筋の見当をつける.方程式中のパラメタが酵素系の代謝活性を表わし,しかも誘導や阻害(抑制)を除けば遺伝的に定まることから,現実に見られるσxの準恒常性―いろいろな属性にあまり依存しないこと―の根元が,生きて育つためには,遺伝子に許される変異の幅の小さいことに在ると推理する.この推理は,根元的な物質ではσxの小さいこと,効果発現時点te,の対数尺の標準偏差σvも根元的な生理現象では小さいことで支持される.
    伝染病の潜伏期間をteと見ると,σvの大きさは体液中の物質のσxと同じ程度であるが,ウィルス性のものが細菌性のものに比して小さく,根元物質のσxに近い.また発病年齢の分布をteの分布とみたとき,右寄り分布(老人病!)の中では,ガンのσvが,発ガン部位に関せず,小さくしかもその大きさはウィルス性の伝染病並みである.
    古典模型だけでは不十分な結果を説明するため伊藤型確率微分方程式の利用にも触れた.
  • 岩瀬 晃盛
    1976 年 5 巻 3 号 p. 115-122
    発行日: 1977/03/30
    公開日: 2009/06/12
    ジャーナル フリー
    舗装道路の簡便な管理方法の開発の一つとして,記録用紙上の路面凹凸観測波と適当な水平レベルとの交点数を利用する方法が既に提案されているが,しかし記録のペンの太さによって観測波に一定の幅が生じ,これが交点数を利用する方法の障害の一つになっていた.本稿においては,このペンの太さを認めた場合での交点数を定義し,これを用いての平均,分散および自己共分散関数の推定式,および必要な図表を与えることによって,上記障害への一つの解決策を示す.
  • 杉山 高一, 尾崎 公, 牛沢 賢二, 清水 政利
    1976 年 5 巻 3 号 p. 123-138
    発行日: 1977/03/30
    公開日: 2009/06/12
    ジャーナル フリー
    考古学において,頭蓋骨と歯の一部とが発掘され,そのおおよその年齢を知りたいことがある.このとき歯は年齢を推定する貴重な情報を提供してくれる.法医学においても,これは興味のある問題である.ここでの分析の目的は,28本の歯の咬耗度のみに基いて,年齢を推定する関係式を求めることであり,データは第3大臼歯を除く28本の個体歯(189体)について,その咬耗の程度を5段階に分けたときの分類と,その各個人の年齢とから成っている.第1章では,われわれの扱っているデータがどのような特性をもっているかについて,散布図・相関行列・主成分分析等を用いて考察する.第2章では,できる限り少い変数で,しかも推定精度の犠牲を最小限にするよう配慮しながら,歯の咬耗度のみに基づく年齢推定式を求める.そのために,変数増減法あるいは変数減増法による重回帰分析を行なうのだが,変数の取捨選択基準として2.0を採用する.第3章では,なぜわれわれが変数選択の基準として2.0を用いたかを,変数選択の際のF-統計量の基準値とAkaike Information Criterion(AIC)との関係について論じ,その理由を明確にする.最後に数量化1類による推定式のほうが推定精度はよいにもかかわらず,われわれが重回帰分析による推定式を主張するのは何故かという疑問に答える.
feedback
Top