回帰分析は統計的データ解析の本流を成し,多くの分野で適用されている.回帰関数としては通常単一の滑らかな関数を考えることが多いが,回帰関数がある点を境に折れ曲がっているように見えることがある.そのような場合は,回帰関数として単一の関数を想定するよりも,独立変数に2つの相があり,各相で異なる回帰関数を当てはめる方が自然であろう.本論文では回帰関数として1次式を考え,単純直線回帰を帰無仮説,ある未知の点(変化点)を境にして連続ではあるが折れ曲がった2相直線回帰を対立仮説とした検定問題に対する尤度比検定を考える.この場合,検定統計量の厳密分布を求めることは現実には困難であり,漸近的にも標準の漸近理論の仮定が成立せず,したがって対数尤度比検定統計量にカイ2乗近似を用いることができない.この点に関し多くの研究者により様々な議論が展開されてきたが,現在のところ実用的な結論は得られていない.本論文ではそれらの議論を検証し,尤度比検定統計量の実用に耐える近似帰無分布を導いた.さらに,誤差分散の大きさ,独立変数の配置により帰無分布がどう変わるか,また検出力がどう変わるかを調べ,棄却点が分散の大きさにはあまり依存しないことを示した.また,高い検出力を持つ配置が経験的に得られた.
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