応用統計学
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31 巻, 1 号
選択された号の論文の5件中1~5を表示しています
  • 西井 龍映
    2002 年31 巻1 号 p. 3-21
    発行日: 2002/07/31
    公開日: 2009/06/12
    ジャーナル フリー
    衛星や航空機搭載のセンサにより観測された多重分光画像やレーダー画像を用いて,地表面の土地被覆を分類する統計手法について考察する.空間相関を持つ多変量正規分布の母数推定法を導出し,罰則付き尤度により空間的にカテゴリがばらつかないように判別する手法を提案する.さらに数値実験により本手法をSwitzerの方法と比較する.またカテゴリの空間配置がマルコフ確率場に従う統計モデルについて再考し,局所的な性質を調べ,実データに適応しその有効性を示す.
  • 鄭 躍軍
    2002 年31 巻1 号 p. 23-40
    発行日: 2002/07/31
    公開日: 2009/06/12
    ジャーナル フリー
    本研究では,画像分解能1kmのNOAA/AVHRR(米国海洋大気局/改良型超分解能放射計)の正規化差分植生指数(NDVI)の月間データから得たカウンティ(県)別の土地利用・被覆類型の面積を基礎データにし,さらに人口統計データを加え,中国の土地利用・被覆の空間的分布状況を計量的に明らかにした,まず,中国本土の2,374カウンティの各種土地利用・被覆面積データに基づき,土地利用・被覆の空間的分布特徴,土地類型間の転用についての関連を記述的に分析した.また,正準判別分析を用いて本土全域の6つの行政地区において地区レベルの土地利用状況を分類した結果により,全国を4つの土地利用パターンに区分し,それぞれのパターンにおけるカウンティ・レベルの植生分布特性を抽出した.さらに,6つの行政地区における農地と林地の分布特徴に焦点を絞り,カウンティ・レベルの1人当たりの耕地・林地占有面積の空間的特徴を総合的に考察した.結論としては,NOAA/AVHRRデータに対する相関分析ならびに正準判別分析の結果が広い範囲の土地利用・被覆分布の空間的特徴を抽出できる一方で,低い空間解像度による土地類型分類の精度問題をも明らかにした.
  • 小池 克明, 成清 耕司, 松田 節郎
    2002 年31 巻1 号 p. 41-58
    発行日: 2002/07/31
    公開日: 2009/12/02
    ジャーナル フリー
    Environmental data acquired by periodic or continuous measurements at many points are expressed in the spatio-temporal region. Therefore, it is necessary to combine a spatial analysis and a time-series analysis for characterizing data distribution. This study adopts geostatistics to construct a distribution model, which can consider spatio-temporal correlation structures peculiar to the regionalized data and has ability to predict the near future values. The concentration data of seven ion components, Na+, Mg2+, K+, Ca2+, C1-, SO2-4, and HCO-3 contented in the groundwater in the Kumamoto city area, southwest Japan, were chosen for a case study of hydrologic environmental related problem. These data were sampled two times per year between 1994 and 2000 at the 31 groundwater observation wells. Omnidirectional semivariograms of univariate and cross-semivariograms of two variates were made and approximated by polynomials. They clarified two features of correlation structures of the components, which are monotonous increase type and periodic change type of semivariances between data pair with increase of distance and time interval. Through the cross-validation from the two viewpoints, (1) temporal extrapolation capability of ordinary kriging and ordinary co-kriging and (2) validness for considering both the spatial and temporal directions, it was demonstrated that the kriging methods can estimate properly the ion component concentrations and produce less smoothing effect. The concentrations in four June times in 1994, 1996, 1998, and 2000 were estimated and characteristics of fluctuation patterns of each component were detected. A cluster analysis of the hexadiagrams using the seven ion component concentrations estimated in each observation year clarified the zones having similar water quality. The lithologies and groundwater flows in the shallow depths are regarded as influence factors on water quality. In addition, the temporal changes of water qualities were found to be interpretable by a combination of the precipitation and groundwater flows. Water management is specially required for the portions where the qualities are changeable.
  • 柏木 宣久, 佐々木 裕子, 飯村 文成, 安藤 晴夫
    2002 年31 巻1 号 p. 59-74
    発行日: 2002/07/31
    公開日: 2009/06/12
    ジャーナル フリー
    汚染発生源の自然環境への影響を明らかにするため,様々な数学モデルが開発されてきた.その内,本稿では,Chemical Mass Balance (CMB)について述べる.CMBは発生源と受容体における特定の物質の質量釣り合いを基に発生源寄与率を推定するためのモデルである。その解法として線形最小2乗法すなわち重回帰が広く用いられてきた.発生源と環境において観測された物質の組成が各々説明変数および目的変数と仮定される.しかし,発生源における観測値も環境における観測値と同様に不規則変動を含んでいる.重回帰はそうした不規則変動を扱えない.この問題以外にも,既存の方法は幾つかの間題を抱えている.それらの問題を解決するため,本稿では,2種類のCMBのための関数関係モデルを提案する.ひとつが質量に基づくモデルであり,もうひとつが比率に基づくモデルである.後者のモデルにおける共分散構造を定義するため,多項分布およびscaled Dirichlet分布の利用も提案する.最後に,提案の方法を実際のダイオキシン類データに適用する.
  • 吉井 めぐみ, 清水 邦夫, 古津 年章
    2002 年31 巻1 号 p. 75-87
    発行日: 2002/07/31
    公開日: 2009/06/12
    ジャーナル フリー
    熱帯降雨観測衛星(TRMM)では,緯度約±37゜の範囲内において,緯経度5゜×5゜領域内の1ヵ月平均降雨強度が最終的なプロダクトとして求められる.TRMM搭載降雨レーダなどの降水レーダで直接に測定される量はZ因子(単位体積あたりの後方散乱断面積に比例する量で,一般に使われるレーダ周波数では雨滴粒径分布の6次モーメントに等しくなる)である.一方,気候や防災などの分野で重要な量は降雨循環であり,何らかの方法でZから降雨強度を推定する必要がある.降雨強度を算出するさいに,いくつかの仮定の下で,レーダ反射因子Z(mm6/m3) と降雨強度R (mm/h) との間にべき乗関係(Z-R関係) Z=ARB (A>0) の成り立つことが知られている.ここで,A と Bは定数である.
    本稿はZ-R関係のパラメータ推定を問題とした.気象レーダ観測で得られるレーダ反射因子Zと雨量計によって地上で計測される降雨強度Rとの関係を与えるパラメータの値を知ることは,TRMMにおいてよりよい降雨マップを得るための研究として重要である.Z-R関係の決定のために,これまで,回帰もしくは逆回帰法,分布関数マッチング法,モーメント分布関数比マッチング法,ローレンツ曲線を利用する方法が知られている.本稿では,logZ と logRについて正規線形構造モデルを仮定し,識別可能な場合としてlogRの分散を既知とした場合を採用した.TRMMが目標とする熱帯から中緯度にかけての降雨のうち,熱帯降雨に関しては対数正規分布の降雨強度分布への適合の良さが観察されていることと,降雨の種類や観測領域等によって適切に層別を行えば,対数正規分布の型パラメータはほぼ一定値をとる傾向があるという経験的事実が知られていることによる.ランダムな欠測が起こるかも知れない状況を想定したデータ構造の下に,モデルパラメータの最尤推定を論じた.
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