将来の技術開発が完成する時点を予測する方法として,N.Dalkey,O.Helmerなどにより,デルファイ法なる新しい方法が提唱されたが,これは開発項目の間に関連がある場合(たとえば,ある技術の完成が他の技術の開発を促進させるなどの意味で),これを考慮に含めていないうらみがあった。T.J.Gordonは新たに,この関連性を考慮した予測手法を提唱し,これをクロス・インパクト・マトリックス法と名づけた。この方法は,ある開発項目D
iの完成が他の項目D
jに与える影響を,成功の初期確率P
jからP
j/iへの変化として与え,シミュレーションによってD
jの最終確率を求めようとするものである。
しかし,この方法は,技術の完成の時点に対する取扱いがアイマイであった。本報は,個々の技術の開発項目Dj(j=1,2,…,n)の完成時期t
jを確率変数としてとらえ,そのcdf F
j(t)が他の項目D
iの成功(その時点をあとする)によってうける影響の度合については,次のごとき2つのパラメータをデルファイ・メンバーに推定してもらうこととした。つまり,t=0の時点でD
iの開発がすでに完成しているものと仮定した場合,技術的にみて(または社会的ニーズの立場からみて),D
jの完成の時期がどのくらい早められるか(遅くなる場合もある)を示す値である。ついで,これを用いてD
i,D
i',…の成功後のD
jのcdfについての1つの仮定を提案した。さらに,ある時点t
0までにD
jが成功しなかった場合の条件つきcdfは,F
j(t)/[1-F
j(t
0)]fort≧;t
0で与えられるものと仮定した。
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