現代のデータサイエンスにおいて,統計モデリングと探索(または最適化)は車の両輪である.統計モデリングでは訓練データという経験知識を用いて対象を近似する確率分布としてモデリングし,探索においては,先験知識にもとづいて対象を境界条件と目的関数の組み合わせでモデリングし,そのモデルに基づいて解を探索する.いずれの手法も,知識そのものの不完全性に起因する不確実性と,手法の限界による不確実性を持つ.特に探索においては,目的関数,すなわち人々が現実世界において持つ価値観が最大の不確実性となることが多い.本稿ではデータサイエンスにおける様々な手法を「知識をどのように表現し,不確実性にどのように対応するか」という観点から捉えなおし,さらにそれらを社会の中に位置づけるというチャレンジについて議論する.その中で,人類社会の価値観の不確実性に対する手法として,アジャイル開発やTEAL型組織などの非技術的な試みについても触れる.