計算機による統計解析のためのソフトウェアの発展に伴って,計算機に関する知識をあまり持たない利用者が,容易に統計解析を行なえるようになった.
しかし,一方では利用者側が統計の知識を持たずに安易に統計ソフトウェアを利用するため,統計解析手法の誤った利用,統計解析結果の誤った解釈といった問題も出てきている.
この問題を解決するために,人工知能の一分野であるエキスパートシステムの成果を統計ソフトウェアの分野において適用した,いくつかの統計エキスパートシステムの試作品が開発されたが,まだ実用段階には至っていない.
試作品の中には,特定の統計解析手法に焦点を当てて開発されたものもある.従来の統計解析プログラムのような,利用者が望むであろう全ての統計量の値を計算して一度に出力するのではなく,統計計算の途中で利用者とシステムがやりとりをする方法を実現している.
またこれらと異なる試作品として,統計解析者の目的に応じて適切な統計解析手法をアドバイスするシステムも開発されている.
しかし,多くの統計解析手法を実行できる総合的な統計エキスパートシステムはまだ実現していない.
ここでは,統計エキスパートシステムとはどのようなものか,またその中でどのような部分が実現可能か,さらに今後どのような問題があるかを分析する.
また,現在我々が開発している統計エキスパートシステムがどの程度実現しているのか,今後どのような計画を持っているのかにっいても述べる.
抄録全体を表示