自動車エンジン油のエンジン試驗ならびに実驗室的試驗を行い, 実驗室的試驗によつてエンジン内部の汚れおよび腐蝕に関係する潤滑油の実用性能を評価することを試みた。
エンジン内部の汚れの原因は2つ考えられる, 即ち油自体の酸化によるラッカ生成と油中に混在する燃料の不完全燃燒生成物であるブローバイ・カーボンの堆積とである。潤滑油のラッカ生成傾向は, シリカゲル吸着分別法によつて油から分離される多環芳香族溜分の量と関係づけられる, プローバイ・カーボンによる汚れは油の清浄性と関係があり, この性状の試驗には“セライト・クロマト”試驗および“カーボン沈降”試驗が有用である。潤滑油の銅-鉛軸受に対する腐蝕性をSohio酸化腐蝕試驗法によつて調べた。腐蝕性に及ぼす各種添加剤および潤滑油の精製度の差違による影響が述べられている。
潤滑油をエンジン試驗によつて評価する場合, 使用燃料の質が評価結果に著しく影響する。一例として, 加鉛ガソリンを使用したエンジンのアルミニウム合金ピストンの腐蝕の原因を調べ, その腐蝕が主としてハロゲン化鉛によつて惹起されたものであることを示した。
前述した多環芳香族溜分と合成酸化防止剤との酸化作用を酸素吸収試驗によつて比較し, その作用が異ならないことを認めた。著者は, この多環芳香族溜分がいわゆる天然防止剤であると主張している。
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