石炭の化学構造研究に関連して, 石炭化度の異る6種の石炭および大の浦炭のベンゾール加圧抽出成分を試料としてこれを1N-HNO
3の沸点で酸化し, 好収率で再生フミン酸を得た。酸化過程における酸化生成物の生成状況と, 生成した再生フミン酸の元素分析値, 中和当量, 酸性基の性状から石炭の化学構造について検討を加えた。
若年炭では酸化速度が大きく, 再生フミン酸収量は一般に小さく, かつ収量一酸化時間曲線において最大がみられ, 得られたフミン酸も炭素含量少く, またH/Cの値が大きく, 中和当量も低い。高炭化度炭ではこれに反して再生フミン酸収量が最大に達するのに長時間を要するが, その収量が大で, かつ収量一時間曲線には若年炭の時のような最大現象は認められなかつた。この場合の再生フミン酸は炭素含量が大きく, HICの値が小さく, 中和当量が高い。以上から石炭は再生フミン酸に引きつがれるような基本構造とこれを結合している部分とからなり, 石炭化度が進むと共に基本構造中での核縮合の度合が増し, その大きさも増大することを述べた。
ベンゾール加圧抽出成分についての実験から, 固状ビチュメンよりの再生フミン酸は抽出残渣炭からのそれと構造的に同一と考えられるが, 油状ビチュメンは酸化に対し全く異つた挙動を示し, 得られる再生フミン酸も非常に違つたものと考えられることを示した。
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