以上の諸実験から, 構成刄先を伴わない流れ型切屑を生ずる場合には次のことが云える。即ち剪断角φ, 摩擦角β, すくい角αの問には (3) 式が成立つ。
ω≡φ+β-α=
f(α) … (A)
次に (1), (2), (6) 式をまとめると
kckmτ
c/τ
s=sin2β/sin2ω… (B)
本実験の範囲では
f(α) =53.50°- (4/15) α°,
kc=1,
km≒2.0である。
従つて, 工具のすくい角αがきまると (A) からωがきまり, 一方剪断面及びすくい画の温度, 歪及び歪速度によつてτ
sとτ
cがきまれば, (B) 式によつて摩擦角βがきまり, (A) 式によつてφがきまる筈である。
之を物理的に表現すると, すくい角がきまると外力とたり面 (剪断面) とのなす角ωがきまり, 一方剪断面とすくい面における変形条件によつて両所におげる剪断流動応力がきまり, 之等と力の釣合条件とからすくい面に加わる力の方向βがきまり, 之とω及びαによつて剪断角φがきまる。
以上は主として実験事実に基づいたものであり, 理論的裏付に欠ける所もあるが, 切削という極めて複雑な現象を純理論的に解析することができない現在としては止むを得ぬことで, 将来の発展にまつほかない。
本研究を更に一般化することは次回以後で行う。
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