光ファイバの現状を極く簡単に紹介した.紙面の関係で接続技術に触れることが出来なかったので別の機会を期待したい.
光ファイバを用いた種々のシステムの建設数は急速に成長しているが,これは従来の銅線ケーブルによるシステムの問題点とそれらの多くを一挙に解決した光ファイバの多くの利点の重要性を如実に表している.現在光ファイバ通信システムの導入が特に積極的に進められている分野は次のような分野である.
(1)公衆通信網の大容量回線
(2)電力系統用通信網
(3)鉄道・道路用通信網
(4)製鉄等プラント内伝送路
これらの分野においては光ファイバの情報密度の高さ,細径,軽量,無誘導性,高絶縁性等の特長が良く発揮されることが理解できる.今後,光素子,各種センサの開発実用化が進められるにつれ,これらの特長が更に広い領域で認識され,光ファイバの適用分野の拡張が進められるものと考えられる.
次に今後光ファイバの分野で開発検討されるであろう事項を挙げる.光ファイバに関してはこれまでに伝送損失の低減,機械強度の向上等,特性改善の検討が加えられてきたが,ほぼ理論的な限界をも極めたと言え,高い完成度にあると考えられる.今後通信需要が急増する時代を控え,多心化と多心ケーブルを意識した被覆構造の開発が進められる見込みである.一方,光ファイバを集合して構成される光ファイバケーブルにおいては多心ケーブルの構造検討が重要な課題になるとともに,布設環境の多様化に対応すべく,ケーブル機械強度の向上,耐熱性耐環境性の向上が検討されると考えられる.
また小文では触れなかったが,光ファイバの接続は,現在では布設工事中に大きな比重を占めており,解決すべき課題が残されている.光ファイバの接続法は各心ごとに電気放電で加熱融着する工法が一般的であり,多くの機器・工具を要するとともに作業量も多い.今後ケーブルの多心化が進み,システム建設数が増加するとともに接続作業の軽減は極めて重要な課題となろう.このため多数心の光ファイバを一括して接続する工法,あるいはプレハブ光コネクタの開発が進められると考えられる.光ファイバを適用した光ファイバシステムの運用が開始されてから6年余を経過し,その間に注目すべき開発成果を得,システムの設計建設技術も定着した.しかしながら,今後築き上げられるであろう長い歴史の中にあっては現在はまだ緒についたばかりと言うべき状況と考えられる.情報化社会が流行語となり,通信需要が多様化,複雑化しながら増大する中で光ファイバを取りまく技術への社会的要求もまた多様化,複雑化するものと考えられる.今後のこの方面の技術開発に大いに期待するところである.
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