せん断切り口の内部組織写真とせん断カーボンチ行程線図とがら,せん断過程と切り口を構成する各部分の性格を追求し,切り口の形状と寸法におよぼす加工諸因子の影響を検討した。実験は加工の基本的なものとして平行直線匁による打抜きの場合と,小穴抜きの場合と四角抜きのかどの部分について行なつた。その結果を要約すると次の通りである。
(1)せん断過程は,ならし期・弾性変形期・1次割れ発生期。2次翻れならびに切削期に大別され,後二者が積層板に特有な過程である。
(2)打抜きの場合,せん断力を
P,その最大値を
Pmとすると,弾性変形期は
P/
Pmが(0.2~0.3)と(0.7~0.8)の範囲にある。1次割れ発生期は
P/
Pmが(0.7~0.8)~1の範囲で,その後期より2次割れが発生し切削期がこれに続く。
Pmと破断せん断力はほとんど一致し,
Pm海までのボンチ喰込み量は板厚の0.155~0.25程度である。
(3)1次割れは材料の弾性破壊と考えられ,その発生状態には材料の拘束条件・クリヤランス・加熱条件の影響が小さい。
(4)せん断切り口は1次割れ。2次割れ面と切削面で構成される。
(5)1次割れの発達や2次割れと切削過程は,材料の拘束条件やせん断輪郭線で著しく相異する。打抜きの場合,材料が拘束されかつ切削過程が良好な雄どせん断面の長い良好な切り口が得られるから材料全固定が好ましい。材料の無拘束なたとえば両匁系材料支持ダイス上材料などでは,2次割れがそのまま切り口になり粗面であつて実用し難い。片匁系材料固定のダイス上材は,1次割れの発達さえなければ最良の切り口になる。すなわち平滑な切り口を得るには1次割れを抑制し,切削作用を良好にする必要がある。
(6)表面割れには,材料自由表面の引張りによるものと,圧痕境界線上の局部的な材料のすべりによるものとがあり,前者は材料が無拘束で自由に回転できれば生じ難い。割れの程度と切り口のあらさは概ね相反関係にある。
(7)切り口には,静的から40
1/secの範囲でせん断速度の影響がない。1次劇れの深さはクリヤランスが大きくなると減少し,せん断速度が速くなると増加するが加熱温度は億とんど影響しない。
(8)小穴抜きは2次割れの方向や2次せん断力の出現などにより打抜きと区別でき,穴直径が板厚の4~5倍以下を小穴抜きとすることができる。すなわちブランクの切り口は2次割れと発達した1次割れとで構成される大きなえぐれを生じ,一方抜穴の切り口はせん断面がほとんど板厚全面におよぶ。
(9)四角抜きのかどの切り口には,かどの曲率半径
Rが最も大きい影響をもち,
R/
H(
Hは板厚)が2~2.5以下になると,小穴抜きに類したせん断過程と切り口になる。またかどの切り口の形状を分類し,曲率半径とクリヤランスに関するその発生区分図を与えた。
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