以上の単一ニードルによる切削実験によって得られた知見を列挙すると,
(1) 単一ニードルの切削では切削速度と切込み設定深さの組合せにより被削材が削られる条件領域と切削が全く行われない条件領域があることがわかった.切削が行われない場合のニードル切れ刃は被削材表面に強く押さえつけられて,高速度でこすられるため著しく摩耗する.前者を切削領域,後者を摩滅領域と呼ぶことにした.
(2) 切削領域でのニードル先端の切れ刃の摩耗状態と,摩滅領域でのそれとは著しく異なる.前者は主に切削熱による凝着摩耗であり, 後者は引っかき摩耗によるものだろうと考えられる.
(3) 切削速度が大きく, 切込み設定量が大きい程切削が起こりやすいことがわかった.
(4) 切削が行われた時の切りくずはいつも連続型であり, すくい角の変化(0°から-20°)が切削力に及ぼす影響は本実験では認められなかった.ニードル径0.5mm,切削速度90 m/min,送り速度0.9mm/rev,被削材材質DIN St 37の時切削主分力
Pr(N)と背分力
PN(N)は真の切込み深さ9(mm)に対して
Pr=478×10
3g1.3PN=3.57×10
3gで表現できる.実現した最小切込み深さは3μmであった.
(5) 切削速度が上昇すると一般に切削力は減少することがわかった.
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