関西医科大学雑誌
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44 巻, 2 号
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  • 安達 一哉
    1992 年 44 巻 2 号 p. 83-93
    発行日: 1992/06/20
    公開日: 2013/02/19
    ジャーナル フリー
    ラットにD一ガラクトサミンの腹腔内投与, 両側腎門部結紮により急性肝障害, 腎障害, 肝・腎障害モデルを作製し, その24時間後の肝臓, 血漿, 筋肉における分岐鎖, アミノ酸(Branched chain amino acids: BCAA), 分岐鎖ケト酸(Branched chain keto acids: BCKA), AlaRine(Ala), 肝のEnergy charge(EC.: (ATP+0.5ADP)/ATP+ADP +AMP), cytosolic redox state, mitochondrial redox stateの動態を検討した結果, 細胞内のエネルギー状態を反映するE. C. はそれぞれの群で低下を示し, エネルギーの供給不足を反映していた. そこでエネルギー供給源の一つとしてBCAA, BCKAを測定したところ, 筋組織において筋蛋白の崩壊によるBCAAの動員がみられ, さらに, BCKA へのトランスアミネーションの充進が示唆され, 同時に糖原性アミノ酸であるAla. も動員され, 肝臓へと運ばれていることが判明した. この様な病態下においては筋組織から動員されたBCAAがBCKAへとトランスアミネーションされ, さらに筋組織あるいは肝臓にて酸化的脱炭酸されることにより, 筋肉, 肝臓にてエネルギー源として利用される可能性が示唆された. 肝障害群, 腎障害群ではそれらをエネルギーとして利用していたが, 肝・腎障害群ではそれはの利用不全が惹起され, Ala. は蓄積状態であり, 又, 脂肪酸のβ酸化からのエネルギー供給も抑制を受けていると思われた.
  • Hisamichi Takeguchi
    1992 年 44 巻 2 号 p. 94-127
    発行日: 1992/06/20
    公開日: 2013/02/19
    ジャーナル フリー
    子宮体から子宮頸部にわたる内膜上皮細胞の月経周期変化および閉経後の変化を,組織学的所見に基づき,超微形態学的に観察し特に妊卵の着床との関連,ならびに組織学的内子宮口における体部と頸部の境界を検討した.
    子宮体内膜上皮細胞には,無線毛細胞と線毛細胞とがみられ,前者が大部分を占めていた.
    透過電顕所見では,無線毛細胞は,増殖期初期から中期にかけて,ribosomeが次第に増加し,roughER,Golgi装置,mitochondriaなどの細胞内小器官が発達し,増殖期後期には細胞内小器官がさらに発達し,基底側にglycogenの蓄積がみられた.
    分泌期には初期から中期にかけて細胞内小器官は膨化を示し,空胞形成が進み中期にはこの変化が最大となり,その後次第に退行変性を示した.増殖期に増加したribosomeは,分泌期中期から次第に減少した.
    一方,線毛細胞の細胞内微細構造には著明な周期的変化は認められなかった.走査電顕所見では,無線毛細胞の遊離縁は増殖期初期から膨隆し,分泌期中期から後期に隆起が最大となり,apocrine,microapocrine分泌様所見が認められた.表面の微絨毛は増殖期初期には短小であるが,増殖期後期から分泌期初期にかけてやや膨化し,その後細胞表面の膨隆にともない減少し,穎粒状となり,消失した.
    線毛細胞は増殖期には増加し,増殖期後期には最多となるが,分泌期では中期から後期にかけて減少した.線毛は増殖期初期では短小で未熟型であるが次第に長くなり,増殖期後期で最長となり成熟型となる.分泌期中期から後期では短小となった.
    閉経後の内膜は萎縮性変化が主体となり,線毛細胞は少数で,その線毛も短小であり,無線毛細胞遊離縁も平坦で微絨毛は密または疎なものが混在した,
    子宮頸内膜は体内膜に比し線毛細胞は少数で,月経周期に於けるその変化は殆どみられない.
    透過,走査電顕所見では,無線毛細胞は,体内膜と異なり排卵期に細胞内小器官の発達が著明となり,分泌穎粒の蓄積が最大となった.
    組織学的内子宮口における子宮体内膜と子宮頸内膜の移行部では,相互の細胞の侵入像,又は細胞相互の移行型はみられず,極めて明瞭な境界線を画していることが明らかになった.
    線毛細胞の分布密度は子宮体と子宮頸において顕著な差がみられたが,子宮体内膜の子宮腔の部位による分布に差は認められなかった.従って,妊卵のほとんどが子宮底付近の前壁あるいは後壁に着床するという現象を重視した場合,線毛細胞のreproductionにおける生物的役割についてはなお明らかでなく,妊卵の着床部位の選択には線毛細胞の数や分布密度のみならず,内膜の線毛の運動性と内膜の妊卵に対する生物学的反応等が関与していると推察された.
  • 西嶋 撮子, 杉町 朋子, 三家 薫, 東田 敏明, 朝田 康未, 奥田 和之, 村田 健二郎
    1992 年 44 巻 2 号 p. 128-139
    発行日: 1992/06/20
    公開日: 2013/02/19
    ジャーナル フリー
    このたびわれわれは,一病棟に働くすべての職員とその時期入院していた全患者の鼻腔前庭と手爪下,およびair sampleを含む病棟環境から細菌の分離を試みた.その結果は病棟職員(医師,看護婦ら)と患者の鼻腔前庭と爪下から最も分離頻度が高かったのは coagulase negative staphyloccocci(CNS)であった.対象者別では,Staphylececcus aureus(S.aureus),methicillin-resistanat S.aMreus(MRSA)ともに患者からもっとも高率に分離された.部位別では鼻腔前庭から分離される頻度がもっとも高く,S.aurens, MRSA, CNS, Corynebacterium, Eschertehia coli,などが分離された.病棟環境72ヵ所とair sample 7カ所から分離された主な菌種はCNS,S.aureus(MSSA,MRSA),Bacillusなどであった.
    Pseudomonas aeroginosa (Ps. aeroginosa)は6カ所から分離され,浴槽,詰め所の流し,洗面所の流し,など湿った場所から分離された.ヒトから分離されたPs. aeroginosaはすべて患者からであった.
    MRSA,Ps.aeroginesaなど院内感染の原因菌となりうる細菌は,患者自身とその周辺から分離される頻度が高かった.
  • アマルガム取り扱いとの関連
    後藤 博文, 吉田 宗弘
    1992 年 44 巻 2 号 p. 140-145
    発行日: 1992/06/20
    公開日: 2013/02/19
    ジャーナル フリー
    歯科医療従事者125人(歯科医師32人,歯科衛生士43人,歯科技工士15人,歯科助手15人,事務作業者11人,歯科医師の家族9人)の全血水銀およびセレン濃度を測定し,質問紙によって得られたアマルガム取り扱い,アマルガム充填歯数食習慣を含む生活習慣に関する情報との関連を検討することにより,以下の結果を得た.
    1.アマルガムを日常的に使用している歯科医師は32人中2人(6.8%)であった.
    2.歯科医療従事者の全血水銀およびセレン濃度(平均値(範囲))は,それぞれ20(5-82)ng/mlと144(63-365)ng/mlであり,いずれも一般日本人の正常範囲内にあった.
    3.男性対象者において,全血水銀濃度とセレン濃度との間に有意(r=0.52,p<0.01)な相関を認めた.
    4.対象者をアマルガム取り扱いの有無で職種ごとに2群に分け全血水銀濃度を比較した.いずれの職種においてもアマルガム取り扱いの有無による差は認められなかった.
    5.重回帰分析において,全血セレン濃度に対しては魚の摂取習慣が意味のある変動要因として選択され,水銀濃度に対してはアマルガム充填歯数と魚の摂取習慣が統計的に有意ではないものの無視できない変動要因として選択された.
    以上の結果より,歯科における現在のアマルガム取り扱いは,血中水銀およびセレン濃度にまったく影響を及ぼしておらず,変動要因としては食物摂取のほうが大きいと結論した.
  • 住田 昌平, 磯谷 俊明, 釘抜 利明, 中西 正史, 斎藤 朱実, 木下 利彦, 村田 章, 斎藤 正己, 加護野 洋二
    1992 年 44 巻 2 号 p. 146-153
    発行日: 1992/06/20
    公開日: 2013/02/19
    ジャーナル フリー
    一般には起こりにくいとされる睡眠中にも擬似発作を認めたヒステリーの1例を,脳波学的および心理学的考察を加えて報告した.
    症例は,32歳の男性.26歳時,作業中に鉄のバールで右側頭部を強打した.頭部CT検査などに異常を認めなかったが,3カ月後より右手指がつるようになり,次第に四肢および全身が強直するような発作が頻発するようになった.てんかんの疑いにて投薬を受けるも効なく,平成2年7月18日,関西医科大学病院精神神経科に入院した.
    入院時より擬似発作を疑い,抗てんかん薬を漸減,中止するも症状は悪化しなかった.脳波検査施行中,発作を認めるも突発性異常波の出現はなかった.また,睡眠脳波記録中,stageIIにおいて発作が出現したが,この時も突発性異常波を認めなかった.
    本症例は,頭部外傷を契機として何らかの心的機制により,身体症状としての全身の強直様発作が表出したと思われた.脳波上,てんかんを示唆する異常波の出現はなく,発作中意識清明で発作後もうろう状態も見られなかった.また,自分の欲求が通らない状況下で発作回数が増すなど,発作が出現し易い時と場所が存在した.性格傾向は,演戯性,自己中心性,依存性が目立ち,いわゆるヒステリー性格に一致した.以上より,本症例の強直様発作は,ヒステリーにおける擬似発作であると考えた.
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