関西医科大学雑誌
Online ISSN : 2185-3851
Print ISSN : 0022-8400
ISSN-L : 0022-8400
55 巻, 2-4 号
選択された号の論文の8件中1~8を表示しています
  • 日置 紘士郎
    2003 年 55 巻 2-4 号 p. 138-143
    発行日: 2003/12/30
    公開日: 2013/02/19
    ジャーナル フリー
    世界最高水準の研究教育拠点の形成を目指す文部科学省の「21世紀COE(CenterofExcellence)プログラム」は,平成14年度から開始され,平成15年度には医学系分野を含めた5分野に関する募集が行われました.これは,21世紀の文明の進展が,知の創造活動に深く依存しており,また我が国の社会経済の活性化並びに国際競争力の強化のために,知的財産や知識資源の整備が不可欠なものであるとの観点から,人材の育成を含め,世界トップレベルの研究教育拠点の形成を助成するためのプログラムといえます.その意味で,本学のこれまでの研究成果並びに将来に向けた研究体制が,世界トップレベルに到達できる可能性があると評価されるか否かがかかっていましたので,ここに採択されたことにより,喜びとともに拠点形成並びに社会貢献への責務を強く感じている次第であります.本学からの申請にあたっては,平成14年6月にCOE対策準備委員会を設置いたしました.同委員会では,大学院教務部長の藤澤教授を委員長とし,研究体制整備の中で必要とされる新しい専攻系を設置するなど,大学院の改組やこれまでの硬究業績の把握将来構想も含め,種々検討を重ねたうえ,病理学第一講座の池原進教授を拠点リーダーとし,基礎・臨床系各領域から計19名の事業推進者で構成した「難病の革新的治療法の開発研究一骨髄内骨髄移植を用いた難病モデルでの検討一」と題した戦略的な拠点形成計画を申請いたしました.幸い,二次審査とも言えるヒアリングを受けるところまで残ることができましたので,ヒアリング当日の早朝を含め,委員会の先生方と数回のリハーサルを行いました.何しろ,学長と拠点リーダーの二人で25分以内に説明を終りなさいという指示でしたから,緊張しつつ,持ち時間内に必要な事項を明確に説明することに専念いたしました.終了後の審査委員からの質問やご意見から出席者一同,これはいけるかなと思った次第ですが,その後は,待つ身の辛さ,期待と不安を抱き続けることになりました先般,平成15年11月8日,ホテルニューオータニ大阪において,「21世紀COE採択記念講演会」(学長挨拶を後記)を同窓会,加多乃会を始め,多くの方々のご支援により開催することができました.そのなかで,本学のCOEプログラム研究拠点形成計画を広く公表することができましたが,その責務をさらに強く感じるとともに,単科大学である関西医科大学においては,学外関係者からの本研究計画に対するご理解とご支援ご協力が不可欠なものであると感じた次第であります.おわりに,COEプログラム研究拠点形成に係る事業を完遂させるため,学内関係者が一丸となって事業にあたるとともに,この事業を通して,関西医科大学の研究教育体制が,次盤代にも対応できるものとなるよう期待するものであります。
  • 伊藤 文人, 菅 豊明, 小川 豊
    2003 年 55 巻 2-4 号 p. 144-150
    発行日: 2003/12/30
    公開日: 2013/02/19
    ジャーナル フリー
    眼瞼下垂症の治療には様々な方法があるが挙筋機能の悪い症例では前頭筋機能を利用した手術治療が選択される.われわれはこれまで主に大腿筋膜移植を用いた吊り上げ術を行ってきたが,過去の前頭筋弁を直接瞼板に固定する直達吊り上げ術の報告を参考にし,真皮前頭筋複合組織弁を用いた治療を経て,現在は前頭筋弁による直達吊り上げ術を行っている。本術式は他部位からの組織採取や人工物を必要とせず,前頭筋の動きを直接上眼瞼に伝えることが可能である.前頭筋弁は後に挙筋腱膜様になるが,その眼瞼挙上効果は持続する.われわれの経験では本法は挙筋短縮術と同様の優れた機能回復が得られることが分かった。
  • 福田 智, 大西 早百合, 新居 康夫, 楠本 健司, 小川 豊
    2003 年 55 巻 2-4 号 p. 151-154
    発行日: 2003/12/30
    公開日: 2013/02/19
    ジャーナル フリー
    翼口蓋窩は側頭下窩の内側で翼上顎裂から連なる狭い骨洞であり,頭部の各部と交通し,同部には多くの重要な血管や神経が走る.この翼口蓋窩を走行する顎動脈の損傷による出血は,顔面骨骨折時あるいは,Le Fbrt I型骨切り術施行時,あるいは上顎智歯抜歯時などに遭遇しうる重篤な合併症の一つである、ひとたび翼口蓋窩内の固有動脈の損傷が起きると大量出血をきたし,その止血点が顔面深部に存在するために,止血操作は大変困難である. 今回われわれは右頬骨骨折整復時に大量出血をきたし,止血処置に経カテーテル動脈塞栓術にて良好な止血がなされた症例を経験した.骨折整復時に際しこのような大量出血に遭遇することは比較的まれであるが,このような合併症が存在する可能性およびその処置について銘記することが大切であると考えたので報告する.
  • 松原 弘明, 正木 浩哉, 神畠 宏, 岩坂 壽二
    2003 年 55 巻 2-4 号 p. 155-161
    発行日: 2003/12/30
    公開日: 2013/02/19
    ジャーナル フリー
    骨髄細胞には血管内皮細胞心筋細胞,平滑筋細胞などの心血管系構成細胞の幹細胞が含まれる.さらに,骨髄細胞自身が強力な血管新生因子であるVEGFやbFGFを分泌する,骨髄細胞から幹細胞を含む単核球分画を単離し,虚血組織(虚血下肢・心筋)に移植すると毛細血管が増生し血行再建・機能改善が動物実験で見られた.ヒト虚血肢(ASO・バージャー病)に対して自己骨髄単核球細胞を利用した血管新生療法を開始した.2000年6月より,2002年2月1日までに外科的・内科的治療によっても血行再建の認めない患者45人の虚血下肢に対して自己骨髄細胞移植をrandomised,double-blindedにて実施した、31人で下肢の血圧が1月後には10mmHg以上上昇し,トレッドミル歩行距離は約2.9倍以上増加し,下肢の疹痛は45人中39人で消失した.下肢潰瘍は31人中27人で完全に治癒した.(Lancet360:427-435,2002).骨髄単核球細胞には骨髄間葉系・造血系幹細胞から分化する心筋幹細胞も含まれる.家畜ブタを用いて慢性虚血心筋を作製し,NOGA3次元解析により冬眠虚血部位を同定しカテーテルを用いて細胞移植をおこなった.全例で心機能改善・虚血域の縮小がみられた.昨年12月19日に実施された難治性狭心症患者への開胸下移植では狭心痛の著明改善(CCSクラスIVからI),心筋虚血部の壁運動改善(シンチ,エコー,NOGA解析),心機能改善(LVG:EF43%から52%)が見られた.血管造影では側副血行の増生は認めなかった.不整脈の発現は1年間見られていない.
  • 日置 紘士郎
    2003 年 55 巻 2-4 号 p. 162
    発行日: 2003/12/30
    公開日: 2013/02/19
    ジャーナル フリー
    「関西医科大学医学会賞」は関西医科大学医師会の後援のもと,当該年本学で学位を授与された若手研究者を鼓舞し,更なる飛躍を期待するために設けられた賞である.応募者は医学会賞選考委員会の厳正なる審査のもと、優秀賞と奨励賞が決定される.平成14年は6名の応募者のうちから1名に優秀賞と2名に奨励賞が交付された.
  • 内山 葉子
    2003 年 55 巻 2-4 号 p. 163-166
    発行日: 2003/12/30
    公開日: 2013/02/19
    ジャーナル フリー
    レニン・アンジオテンシン系は,生体内において,循環調節や電解質バランス等の調節機構に重要な役割を演じている.循環調節作用に加え腎臓血管肝臓心臓などでの局所作用も認められている.メサンジウム細胞(MC)は,糸球体末梢係蹄の単なる支持組織ではなく,糸球体微小循環の調節,様々なサイトカインや増殖因子の産生,放出,免疫応答における抗原提示細胞としての役割など多彩な機能を有している.さらに,糸球体基底膜およびメサンジウム基質を産生する場でもある.糸球体傷害時には,この細胞外マトリックス基質が増加し,糸球体硬化を引き起こす.MCには,アンジオテンシン1型受容体(AT1)受容体が存在しており,アンジオテンシンII(AngII)はマトリックス蛋白ファイブロネクチン(FN)発現を充進させる.また,TGFLβ は,AngIIによって分泌されることが明らかとなっている.FN産生に,TGF-β が重要な役罰を果たしていることは知られているが,それらの詳細なシグナル伝達機構は明らかにされていない。今回,私達は,AngIIもしくは,TGFβ によるFN発現調節へのHB-EGFを介した上皮成長因子受容体(EGFR)共役活性化の関与およびFN合成.分泌機構について検討した.
  • 田橋 腎也
    2003 年 55 巻 2-4 号 p. 167-174
    発行日: 2003/12/30
    公開日: 2013/02/19
    ジャーナル フリー
    TGFβ(TransformingGrowthFactor-beta)は,さまざまな細胞外マトリックス(ECM)の産生を促し,細胞の分化増殖移動接着を調節することにより組織の修復過程において重要な役割を果たしている.肝臓においては,急性肝炎後にはTGFLβ の発現が充進し,肝組織の再構築に深く関与している.その際特記すべきは,このような創傷治癒過程におけるECMの産生は厳密に制御され,TGF-pによるECMの蓄積は一過性で終了することである.したがって,通常は急性の肝障害で肝線維化はきたさない.しかしジ肝炎ウイルス感染などの慢性的な障害因子が存在すればTGF-β の持続的な高い発現を伴って肝線維化は進行し,小葉構造の改築が加わることで慢性肝疾患の終焉像としての肝硬変に至る.急性肝疾患における一過性のECM産生には,活性化星細胞(HSC)が中心的な役割を果たすことが知られている.一方,慢性肝疾患においては,活性化したHSCは形質転換して筋線維芽細胞様(MFB)となる.ところが,MFBは活性化HSCと異なり,持続的にECMを産生することで肝線維化の発症・進展に重要な役割を演じるようになる.これらの現象をTGF-βシグナル伝達の視点から考察すれば,急性肝障害後の活性化HSCにおいてはシグナル伝達の舗御機構が働くのに対し,慢性肝疾患におけるMFBではこの制御機構が働かなくなるためにTGF-β のシグナルが恒常的に伝達されているのではないかと推測される.
  • 竹村 清介
    2003 年 55 巻 2-4 号 p. 175-180
    発行日: 2003/12/30
    公開日: 2013/02/19
    ジャーナル フリー
    関節リウマチ患者の滑膜組織では,T細胞B細胞マクロファージ,樹状細胞などの様々な免疫担当細胞が浸潤しており,複雑なリンパ性微細構造を形成している.一部の症例では,二次性リンパ節にみられるリンパ濾胞に類似した,主としてT細胞とB細胞から構成されるリンパ球集籏が認められる.末梢リンパ節バイエル板,脾臓などの二次性リンパ組織に対して,関節リウマチで見られるリンパ球集籏は三次性リンパ組織もしくは異所性リンパ組織と呼ばれている.リウマチ滑膜におけるこのようなリンパ節新生は二次性リンパ組織におけるその微細構造と多くの共有した特徴を有している.しかしながら,関節リウマチの滑膜で,このようなリンパ様組織が異所性に形成される機序については不明のままである.また,どのような分子マーカーが滑膜におけるリンパ様組織の形成に重要な役割を果たしているのかも解明されていない.近年,二次性リンパ組織に見られるリンパ濾胞の形成にTNFα,Lymphotoxin(LT)-α,LT-β などのTNFsuperfamilyが重要な役割を果たしていることがgenetargeting mouseの実験により示された.この中で,LT-α1β2が二次性リンパ組織の微細構造の維持に中心的な役割を果たしていることが明らかにされてきた.TNF superfamilyと同様に,リンパ組織の中への細胞誘導に寄与しているケモカインもリンパ節新生に深く関与している.リンパ球の主な構成要素であるT細胞とB細胞は別々のケモカインによってそのリンパ組織の中での遊走がコントロールさている.リンパ節が乏しい突然変異マウスであるplt(paucity of lymph node)マウスではリンパ節内にT細胞領域が存在せず,T細胞の遊走能が障害されていることが示唆されていた.1999年,Vassilevaらによりこのマウスではsecondary lymphoid chemoattractant(SLC)が欠如していることが明らかにされ,SLCがT細胞の遊走能に主要な役割を果たしていることが示された.一方,リンパ組織におけるB細胞の遊走はBlymphocyte chemoattractant(BLC) によりコントロールされている.B細胞にはBLCの受容体であるCXCR5が発現されている.CXCR5のknockoutmouseではバイエル板鼠径リンパ節,脾臓のリンパ濾胞の正常な発育が障害されていることより,BLC/CXCR5のreceptor-ligandpairがB細胞の遊走のみならず,リンパ組織の形成にも不可欠であることが示された.今回の研究では,リウマチ滑膜を組織学的に分類し,二次性リンパ組織で重要な役割を果たしているサイトカインやケモカインがリウマチ滑膜ではどのように関与しているのかを調べた.
feedback
Top