大規模地震時に広範囲に点在するダムが被害を受けた際,ダムの被災状況を効率的に把握することを目的に,地震時にダムで取得される地震動データを基に,Autoencoderを用いたダムの異常を検知する手法の確立に向けた基礎的な研究を行った。具体的には,過去に大規模地震を受けて,一時的に水平方向の一次固有振動数が低下した型式の異なるダム2基の地震動データを対象に,Autoencoderを用いた異常検知を行い,精度の評価と誤判定要因の分析を行った。さらに,これらの検討結果を踏まえ,実用化に向けた課題と方向性について論じた。
平成30年9月6日,最大震度7を記録する平成30年北海道胆振東部地震が発生した。震央より約19kmの距離にある瑞穂ダムは,ダム堤体天端付近が損傷し,ダム周辺斜面は崩壊して土砂等がダム貯水池に流入するなど大きな被害を受けた。このため,直轄災害復旧事業により,瑞穂ダムを復旧した。本ダムの復旧にあたり,早期のダム堤体周辺の被災状況把握,情報化施工技術等を活用したダム堤体の再盛立,かんがい用水を供給しながらの復旧工事と試験湛水を実施し,令和5年度に本格供用を開始した。これら一連の取組について報告する。
成瀬ダムは,雄物川水系河川整備計画として,河川構造物認定を受けた台形CSGダム型式で,堤高が100mを初めて超える国内最大規模の多目的ダムである。成瀬ダムは東北地方でも有数の豪雪地帯にあり,冬期打設ができない環境であるため,CSGおよびコンクリートの打設は4月中旬から11月中旬の7か月と限定されている。このため,国内最大規模となる堤体打設では,品質と安全を確保した上で,最大限の高速施工で取り組んだ。本稿では,令和6年にCSGの打設が完了したことから,これまでの施工事例について報告する。
成瀬ダムは台形CSG型式のダムであり,堤体材料の一部であるコンクリート骨材とCSG材を同一の山から採取している。近年,ダム建設においては骨材又はCSG材となる原石母材の採取率向上が求められている。さらにCSG材は,現地発生材であるCSG母材を破砕のみで製造するため,品質のばらつきが大きく,製造時は室内試験による材料特性の監視が必要不可欠である。そのため画像解析とRI水分計を用いて製造した破砕材の粒度と表面水量を連続的に監視するシステムを原石山破砕材に適用した。本稿では,原石母材の採取率向上のため採用したダム原石採取管理システム,白斑量画像解析システム,簡易迅速評価法およびCSG材の粒度・水分量連続監視システムの概要と適用結果を示す。