本研究は, イタリアの盛期ルネサンスを代表する建築家の一人バルダッサーレ・ペルッツィが1533年に描いた「サン・ピエトロ大聖堂の計画のための鳥瞰図」を分析対象とし, ルネサンス期のイタリアにおける透視図法の展開過程を考察したものである.考察手順は以下の通りである.1) この図における消点を推定し, それにもとついてこの図を描く際に用いられたであろう作図線を推定復元する.2) イタリアの建築家ジャコモ・バロッツイ・ダ・ヴィニョーラ (1507年-1573年) の著作『実践的透視図法に関する2つの解法』 (1583年) のなかで, ペルッツイの透視図法について記述された文章を鑑み, ペルッツイの作図法を想定する.考察の結果, ペルッツイの用いた作図法は対角線を用いて, さきに描く図そのものの上下寸法を設定することによって, 必然的に図の横寸法が確定される方法であったと考えられる.
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