本研究は, 建築平面図を利用した読図テスト
[1]Plan Interpretation Test (以下PITと呼ぶ) を用いて, 建築空間の把握能力について検討する.このPITは, 被験者に建物の一部を撮影した写真と平面図を提示し, 図上で, 写真のアングルがどの位置からどの方向を見ているかを解答させるものである.筆者らはPITを用いたこれまでの研究
[1]において, 外部空間の識別が, 内部空間の識別に比較して難しいこと, また2層以上の吹き抜け等を持つ空間の識別が単に1層の室内空間の識別に比較して難しいことを明らかにした.
本稿では, PITによる建築平面の表現法と空間把握の度合いについて評価する為, 97年度から99年度まで874人の被験者に適用し分析を行った.主要な結果は以下の通りである.1) PITの設問の中で, 写真をカラー化することで正答率が高くなる傾向がある.2) 今回のテストにおいて提示写真から家具を消すことで正答率が9.43%, 提示図面から家具を消すことで正答率が4.40%, 提示写真および提示図面の両方から家具を消すことで正答率が5.60%低くなる.3) PITの各設問における図面表現としてミリタリー投象のような平面図の上下間の重なりを意識させる表現方法での提示や, 断面図のような垂直方向の情報を追加しても, 外部空間の識別や2層以上の吹き抜け空間の識別が容易にはならない.
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