図学研究
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53 巻, 1 号
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研究論文
  • 佐久田 博司, 西原 小百合, 西原 一嘉, 堤 江美子, 鈴木 賢次郎
    2019 年 53 巻 1 号 p. 3-8
    発行日: 2019年
    公開日: 2020/03/01
    ジャーナル オープンアクセス
     佐久田博司,西原小百合・西原一嘉,堤江美子らは中・高年齢者に対してMCTを実施した.本論文においては,これらの調査結果と,従来実施されてきた小〜大学生におけるMCT調査の結果を併せて,空間認識力の年齢変化について考察した.主要な結果は以下の通り:( 1 ) 一般社会人のMCT得点は30歳代でピークに達し,その後,年齢とともに減少する.退職した60歳代以上の高齢者の平均得点は中年齢層の平均得点より有意に低い.( 2 ) 一方,機械設計技術者については50歳代までピーク値を維持する.このことは,日常的に3 次元形状に注意を払うことが,MCTにおいて高得点を維持するのに重要な役割を果たしていることを示唆している.( 3 ) 中年齢層においては男性の平均得点は女性を有意に上回っているが,60歳代以上ではこの性差は消滅する.他に,MCTの個々の問題の正解率の年齢変化や,MRTの年齢変化との比較考察なども行った.
  • ル・コルビュジエによる諸イメージの遊動
    加藤 道夫
    2019 年 53 巻 1 号 p. 9-16
    発行日: 2019年
    公開日: 2020/03/01
    ジャーナル オープンアクセス
     本研究の目的は,ル・コルビュジエが実現した最初の都市デザインであるチャンディガールにおける建築・都市デザインを絵画,建築,都市を横断する彼の制作活動全体の内で位置づけることである.そのため,彼の手紙や各種のスケッチブック等からチャンディガールに関連する多くの絵画イメージとそれに関連する記述を収集した.その上で,絵画,建築,都市それぞれの分野におけるイメージ群の生成と展開とそれらのチャンディガールにおける都市・建築デザインとの関連を検証した.その結果,その建築・都市デザインを以下のように位置づけることができた.すなわち,チャンディガールは,彼にとって単に一つの新都市の創造に留まらない.チャンディガールという場所のコンテクストの下に集められた諸イメージが,絵画・建築を・都市を横断して織りなす遊動である.
  • 井堰 絵里佳, 伏見 清香, 籔本 美孝, 池本 誠也, 真鍋 真
    2019 年 53 巻 1 号 p. 17-24
    発行日: 2019年
    公開日: 2020/03/01
    ジャーナル オープンアクセス
     博物館では展示解説などの設置位置がわかりにくいため,携帯情報端末用展示解説Webを制作する.また,画面上と展示空間の視点の位置関係をわかりやすくするため,展示空間の写真を用いる.加えて,2つの博物館の連携により,同種の標本に対して異なる視点の展示解説の閲覧が可能となる.これは,標本をより広く,深く知るために連携先の館への誘導を促し,展示解説Webが観察力向上のためにユーザの新たな興味につながることを目標としている.その前段階として,実証実験を行った.ユーザの60.6%が新たな興味や発見があったと回答し,78.8%が2種類の展示解説を閲覧できることに興味を示した.また,展示解説Webに展示空間の写真を用いたことで,ユーザが情報を得たい標本をすぐに選択できることがわかった.さらに,各館の基調色を用いたアイコンが操作方法の直感的な理解に繋がったと推測された.今後,展示解説Webに他館への誘導効果があるか調査を行う.
  • 椎名 久美子, 田中 一郎, 奈尾 信英
    2019 年 53 巻 1 号 p. 25-31
    発行日: 2019年
    公開日: 2020/03/01
    ジャーナル オープンアクセス
    東京大学では,手描きによる図法幾何学を学んだ後で,CAD/CGソフトを用いた実習を通して立体形状の表現を学ぶという「図形科学」の履修カリキュラムが長く続いていたが,2015年度入学生から,3D-CAD/CGソフトによる実習の後で手描きの図法幾何学を学ぶカリキュラムに変更された.本研究では,この変更によって図形科学教育による空間認識力の育成に変化が生じたかどうかを検討するために,講義の前後に切断面実形視テスト(Mental Cutting Test:MCT)を実施した.各講義の前後のMCT得点の平均点差については,2016年度と2017年度の調査で有意差の傾向が安定せず,継続的に調査を行って検討する必要性が示された.今回の調査結果からは,手描きによる図法幾何学の講義を受講しようとする学生は,MCTで測定される空間認識力が高い集団である可能性が示唆された.
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