A型インフルエンザウイルスは, 8本のマイナス鎖のRNA分節を遺伝子として持つウイルスである。最近, 我々は細胞内に存在するRNAポリメラーゼを利用することにより, 効率よくインフルエンザウイルス様粒子 (virus-like particles: VLP) を作出する系を確立し, さらに, その遺伝子が全てcDNAに由来するインフルエンザウイルスを生成する遺伝子操作技術を開発した。この技術を用いて, 細胞に1度だけ感染しウイルス蛋白質は発現するが, 新たな感染性粒子は産生しない“半生”インフルエンザワクチンを設計した。その効果をマウスを用いて検定したところ,“半生”ワクチンは顕著な感染防御効果を示した。このように, 新しい遺伝子操作技術はインフルエンザウイルスを自由に設計することを可能とし, 基礎研究のみならずワクチンやベクター開発に広く貢献することが期待される。
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