水環境学会誌
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42 巻, 6 号
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ノート
  • 小松 一弘, 尾内 秀美, 今井 章雄, 川崎 伸之, Hashim Emi Fazlina, Rajuddin Mohd Kushairi ...
    原稿種別: ノート
    2019 年 42 巻 6 号 p. 239-246
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/11/10
    ジャーナル フリー

    本研究では3種類の異なる特性を持つ土壌抽出液と7種類の微細藻類を用意して培養実験を行い, 土壌抽出液の微細藻類増殖に及ぼす効果を, 抽出物に含まれる溶存有機物特性との関連から評価した。多条件での培養を実現するためにマイクロプレート培養法を適用した。結果として, 国立環境研究所で利用されている土壌抽出液 (SE-N) が25 ℃の培養条件で最も高い藻類の成長促進効果を持つこと, Raja Musa Forest Reserve (SE-R) で採取された土壌の抽出液 (SE-R) が, 30 ℃の培養条件で成長促進効果を持つことを明らかにした。さらに各土壌抽出液に含まれるDOMの蛍光特性から, SE-Nは励起・蛍光マトリックス (EEM) 上においてトリプトファン様ピークを持つ高分子の有機物を多く含んでおり, こうした有機物が微細藻類の成長に影響を及ぼすことが示唆された。

技術論文
  • 小林 憲弘, 宮本 紫織, 佐藤 学, 木下 輝昭, 高木 総吉, 岩間 紀知, 粕谷 智浩, 古川 浩司, 堀池 秀樹, 齊藤 香織, 京 ...
    原稿種別: 技術論文
    2019 年 42 巻 6 号 p. 247-258
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/11/10
    ジャーナル フリー
    電子付録

    前報で確立した水道水中の140農薬のLC/MS/MS一斉分析法が全国の水道水質検査に適用できるかどうかを検証するために, 国立衛研以外に新たに11機関において水道水を用いた添加回収試験を行い, これら12機関の試験結果を合わせて解析および評価した。各機関は, 採取した水道水にアスコルビン酸ナトリウムを加えて脱塩素処理した後, 140農薬の混合標準液を添加し, 各機関で最適化したLC/MS/MS測定条件を用いて試料を測定した。その結果, 48農薬は目標値の1/10と1/100の両方の添加濃度において全12機関が厚生労働省の「水道水質検査方法の妥当性評価ガイドライン」の真度・併行精度の両方の目標を満たし, 69農薬は過半数 (≧7) の機関が同ガイドラインの真度・併行精度の両方の目標を満たしたことから, 本分析法は迅速・簡便な農薬一斉分析法として全国の水道水質検査に適用できると考えられる。

  • 早川 和秀, 廣瀬 佳則, 岡本 高弘, 七里 将一, 尾原 禎幸, 能登 紀幸, 井上 信介
    原稿種別: 技術論文
    2019 年 42 巻 6 号 p. 259-267
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/11/10
    ジャーナル フリー
    電子付録

    水環境における有機汚濁を示す指標の1つである全有機炭素 (TOC) について, 懸濁物を含む試料での分析精度を高めるため, 燃焼酸化式TOC計による分析の前処理や測定方法について検討した。超音波ホモジナイズによって懸濁物を破砕することで, 分散した物質の均質化を促し, TOC測定値の確度を向上させることができた。試料の注入シリンジ内や機器内の経路の減失を少なく設計されたTOC計を用いると, 琵琶湖北湖試料では良好な回収率が得られたが, 高濃度の懸濁物や溶存有機物を含む試料では回収率が低下する問題がみられた。回収率の低下はTOC測定値から溶存態有機炭素 (DOC) 測定値の差分によって算出される粒子態有機炭素 (POC) 測定の正確度を下げる。ただし, TOC燃焼酸化方式にあるNPOC法とTC-IC法の2つの測定方法を試料濃度によって使い分けることで, 正確度を補えることが明らかとなった。

  • 鈴木 祥広, 遠藤 圭吾, 大幸 和佳奈, 糠澤 桂, 古橋 勇一, 仲元寺 宣明
    原稿種別: 技術論文
    2019 年 42 巻 6 号 p. 269-275
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/11/10
    ジャーナル フリー
    電子付録

    本研究では, 遠心脱水機に導入する汚泥の調質プロセスを想定し, 消化汚泥の各性状項目 (11項目) と高分子凝集剤の最適薬注率の関係を検討した。さらに, 汚泥を遠心分離して得られる上澄み液 (コロイド状物質と溶存物質の混合相) に着目し, 上澄み液の性状項目を追加した。そして, 最適薬注率を支配する性状項目について検討した。その結果, TSと最適薬注率には相関関係が認められなかった。そこで, 最適薬注率は汚泥の総質量を基準とし, 汚泥質量と高分子凝集剤の添加量から評価した (g 100 g-汚泥質量-1=%対汚泥) 。各種の性状項目の関係を再度検討した結果, 上澄み液のアニオン度と濁度は, 高分子凝集剤の最適薬注率と最も強い相関関係を示した (相関係数r:アニオン度, 0.73;濁度, 0.68) 。したがって, 対象とする原汚泥を遠心分離処理し, 上澄み液の濁度を測定するのみで, 高分子凝集剤の最適薬注量が予測できることがわかった。

調査論文
  • 大山 浩司, 矢吹 芳教, 伴野 有彩
    原稿種別: 調査論文
    2019 年 42 巻 6 号 p. 277-284
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/11/10
    ジャーナル フリー

    大阪府内の農業地帯を流下する河川, 下水処理水の寄与が大きい河川, 及び大阪府内各地域の主な河川において, ネオニコチノイド系農薬及びフィプロニルの実態調査を行った。その結果, ニテンピラムとチアクロプリドを除く農薬が全ての調査地点で検出された。イミダクロプリドの濃度は6月に, ジノテフランの濃度は8~9月に顕著に上昇しており, これらは水稲におけるそれぞれの農薬使用時期と一致した。今回の調査で検出された農薬濃度は, 農薬登録基準および環境中予測濃度 (PEC) よりも低かったが, 種の感受性分布 (SSD) を用いた生態系への複合影響評価を行ったところ, 農業地帯の河川では5月下旬から6月下旬にかけて, EU等で無影響の基準とされている5パーセントよりも一時的に高くなると算出された。

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