水環境学会誌
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44 巻, 6 号
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ノート
  • 大島 詔
    原稿種別: ノート
    2021 年 44 巻 6 号 p. 175-178
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/11/10
    ジャーナル フリー

    2019年に厚生労働省より発出された指針改定を受け, 多くの自治体では公衆浴場の浴槽水の有機物に係る基準を原則「過マンガン酸カリウム消費量で25 mg L-1以下であること」から「全有機炭素量で8 mg L-1以下であること」へ条例等の改正をした。数値のみに着目すると0.32倍の変更であり, 大阪市でも所要の改正が実施されたが, その後の検査で基準値超過となる施設の割合が増加したと思われたため過マンガン酸カリウム消費量 (KMnO4) と全有機炭素量の関係を調査した。47施設を調査し, うち消毒剤に無機物を使用していた38施設ではTOC = 0.456 KMnO4の関係にあり, KMnO4の係数は0.32よりも有意に高かった。大阪市で実施された本調査によりTOCによる浴槽水の新基準値はKMnO4で規定されていた旧基準値と比較して相対的に厳しい基準である可能性が示された。

  • 松浦 武, 小野 美香, 屋形 直明, 関 雅範
    原稿種別: ノート
    2021 年 44 巻 6 号 p. 179-183
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/11/10
    ジャーナル フリー
    電子付録

    昨今, 魚類急性毒性試験ではカテゴリーアプローチによるトレンドアナリシス (TA) 推定値を用いて試験濃度範囲を選択することが可能となったが, TA推定値と毒性実測値を比較した研究はほとんどない。本研究においてn-デシル硫酸ナトリウムのメダカ (Oryzias latipes) に対するTA推定値[48時間半数致死濃度 (LC50) ]と毒性実測値 (96時間LC50) を比較した結果, それぞれ310及び420 mg L-1であり, これらの差は1.5倍以内であった。n-デシル硫酸ナトリウムのアルキル炭素鎖長は既存データのアルキル炭素鎖長の範囲外のため, 本研究で得られたTA推定値は信頼性が低い外挿値とみなされ, 本試験の濃度設定を行う際には根拠が弱いと考えられた。しかしながら, TA推定値に加えて関連する入手可能な情報 (他魚種の毒性値等) も考慮することで, より高い精度で本試験の濃度設定を行うことが可能と考えられる。

調査論文
  • 藤原 建紀, 鈴木 元治, 大久保 慧
    原稿種別: 調査論文
    2021 年 44 巻 6 号 p. 185-193
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/11/10
    ジャーナル フリー
    電子付録

    全国の海域での栄養塩類削減により, 全窒素 (TN) ・全リン (TP) の環境基準達成率はそれぞれ96%および95%に達した。それにも関わらず, 化学的酸素消費量 (COD) の達成率は最近30年間ほとんど変わっていない。この相違の原因を, 大阪湾を例に調べた。TN削減により植物プランクトンの高濃度のブルーム (赤潮) の発生を抑制するという富栄養対策が有効に作用していた。このことは粒状態有機物に関連する水質指標によく現れていた。CODが下がらないのは, 主に溶存態有機物に原因があると考えられた。海域のTN濃度低下により, 海域の有機物 (溶存態および粒状態を含む) のC:N比が上昇し, 窒素で測った有機物量は低下するものの, 炭素で測った有機物量の低下はわずかであった。またCODとTOCの乖離が起きていた。栄養塩削減で海域の有機物の質 (C:N比等) が変わり, CODが低下しないことは, 東京湾・伊勢湾と共通していた。

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