水環境学会誌
Online ISSN : 1881-3690
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43 巻, 2 号
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ノート
  • 三木 理, 奥村 真子, 中島 隆甫, 参納 千夏男, 田中 義人, 石川 竜子
    原稿種別: ノート
    2020 年 43 巻 2 号 p. 25-34
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/03/10
    ジャーナル フリー
    電子付録

    普通コンクリートパネルやフライアッシュ (FA) を活用したFA高含有ポーラスコンクリートパネルを取り付けた藻場造成材を用い, 能登半島において約4年間のフィールド実験を実施し, 褐藻カジメ属植物を主体とした藻場造成の可能性や課題について検討した。この結果, 4年後には藻場造成材上に14個体のカジメ属植物であるクロメが着生, 生長し, その半数が成熟した。クロメは普通コンクリートパネルよりもFA高含有ポーラスコンクリートパネルに多く着生する傾向があり, 最大24個体m-2の着生密度であった。クロメの着生数は, 藻場造成材の設置環境によって大きく異なり, 波浪等の環境条件が着生に強く影響すると推定された。さらに, 4年を経て藻場造成材にはマクサ等の小型海藻からクロメ等の大型褐藻まで多岐に及ぶ多様な海藻相が形成され, 植食動物による海藻の摂食も見られなかったことから, 能登半島における藻場造成の可能性が示唆された。

  • 柏原 学, 秦 弘一郎, 松木 昌也, 古賀 敬興, 古閑 豊和, 平川 周作, 黒川 陽一, 宮脇 崇, 志水 信弘, 松本 源生, 石橋 ...
    原稿種別: ノート
    2020 年 43 巻 2 号 p. 35-41
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/03/10
    ジャーナル フリー

    アンモニア性窒素 (NH4-N) を多く含み塩素消毒された下水処理場放流水において, 水質汚濁防止法に定める方法で全窒素 (T-N) 濃度を測定したところ, T-N濃度が溶存無機性窒素濃度を下回る現象が発生した。その原因として, アルカリ性条件下で試料中のクロラミン類の一部が, 窒素ガスまたは亜酸化窒素ガスへ変化したことにより, T-N濃度が過小評価されていることが示唆された。そこで, NH4-Nを1 mg L-1, 次亜塩素酸ナトリウムを有効塩素として1 mg L-1含む模擬排水のT-N分析において, 50 mmol L-1亜硫酸ナトリウム (Na2SO3) 溶液を全容量に対し0.4%以上添加したところ, T-N回収率が98%まで向上した。また, 実試料で添加回収試験を実施したところ, T-N回収率は100~104%となった。

調査論文
  • 鈴木 元治, 中谷 祐介, 古賀 佑太郎
    原稿種別: 調査論文
    2020 年 43 巻 2 号 p. 43-53
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/03/10
    ジャーナル フリー
    電子付録

    瀬戸内海播磨灘において, 貧栄養化対策として実施されている下水処理場の窒素排出量増加運転が, 有機物, 窒素及びりんの表層海水中濃度に与える影響を評価した。まず, 窒素排出量増加運転を実施している二見浄化センターの周辺海域を調査した。その結果, 窒素排出量増加運転による有意な水質変化は観測されなかった。つぎに, 数値モデルを用いて, 兵庫県下20か所の下水処理場が窒素排出量増加運転を実施した場合について解析した。その結果, 溶存無機態の窒素及びりんは植物プランクトンに取り込まれ, 植物プランクトンが移流拡散することで, 灘全体にわたり有機物と窒素濃度が上昇することが推算された。観測値には, 海水による希釈や他の窒素排出源の影響により, 窒素排出量増加運転の影響が確認できなかったと考えられるが, 今後, 窒素排出量増加運転の実施処理場が増えた場合には, 播磨灘の広範囲の水質に影響を及ぼし得ることが示された。

  • 辻 盛生, 長澤 裕太郎, 伊藤 英之, 鈴木 正貴
    原稿種別: 調査論文
    2020 年 43 巻 2 号 p. 55-62
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/03/10
    ジャーナル フリー

    河岸段丘周辺の5カ所の湧水を対象に, 1年間の水質変動と冬季の硝酸安定同位体の関係から, 地上部の土地利用が地下水に与える影響を評価した。その結果, 湧水涵養域側の土地利用が山林である2湧水の水質組成は極めて近く, 人為の影響を受けていない水質と考えられた。周辺が水田の段丘面の湧水は, 硫酸アンモニウムの影響を受けたと考えられる水質組成であったが, NO3-N濃度は低かった。段丘面の土地利用が畑地である段丘崖の湧水では, 苦土石灰や塩化アンモニウム等の化学肥料の影響が示唆される水質を示した。段丘面上に養鶏施設や住宅地がある湧水では, 有機物由来の窒素やK+, Na+, Cl-の濃度が高く, 生活排水由来の汚染が懸念された。

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