水環境学会誌
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46 巻, 6 号
選択された号の論文の3件中1~3を表示しています
研究論文
  • 杉野 史弥, 小室 隆, 山室 真澄
    原稿種別: 研究論文
    2023 年 46 巻 6 号 p. 157-162
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/11/10
    ジャーナル フリー
    電子付録

    湖沼の湖岸水温は公共機関による水質調査や学術研究などの報告がほとんどない。そこで本研究では, 湖岸水温に関する知見を得るため霞ヶ浦の湖岸17地点に水温ロガーを設置し, 2022年7月~9月にかけて水温モニタリングを行った。湖岸は湖心より昼間に水温が高く, 深夜は水温が低い傾向にあり, 観測期間中の湖岸水温は最高で37.4 ℃にも達していた。また湖岸水温に影響を与える環境条件として消波堤と流入河川の有無を検討した結果, 消波堤がある湖岸では消波堤がない湖岸に比べ昼間は水温が高くなり, 流入河川の存在は付近の湖岸水温に影響を与えることがわかった。本研究の結果, 夏季の霞ヶ浦の湖岸では異常な高水温環境が形成されていることがわかり, 霞ヶ浦におけるワカサギやイシガイの減少を引き起こしている可能性が考えられた。地球温暖化に伴い湖岸水温はさらに上昇すると予想されるため, 湖岸生態系保全のため湖岸水温の継続的な観測が必要である。

  • 西嶋 渉, 梅原 亮
    原稿種別: 研究論文
    2023 年 46 巻 6 号 p. 163-171
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/11/10
    ジャーナル フリー

    1980年代以降の瀬戸内海における溶存無機窒素 (DIN) とリン (DIP) 濃度の時空間分布と植物プランクトンの制限栄養塩の変化について, クラスタリングした海域に対して解析した。DIN濃度は全海域で低下した一方で, DIP濃度は陸域影響の強い海域および外洋影響が強い海域との遷移海域で低下したが, これらの海域は瀬戸内海全面積の約2割である。一方で, 全体の8割を占める外洋影響の強い海域では有意な低下は観察されなかった。陸域影響の強い海域でのDIN濃度の低下率は過去40年間の窒素負荷削減率よりも大きく, DIP濃度の低下率は負荷削減率と同等であった。DIN濃度の低下は外洋影響の強い海域でも見られ, 低下率は3割から4割程度に達していた。陸域影響の強い海域はリン制限であり, 外洋影響の強い海域は窒素制限の面積割合が高かった。DIN濃度が全海域で低下したことに伴い, 外洋影響の強い海域では, 秋季から冬季に窒素制限海域の面積比が大きくなった。

  • 舩越 裕紀, 田中 雅幸, 小林 志保, 藤原 建紀
    原稿種別: 研究論文
    2023 年 46 巻 6 号 p. 173-180
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/11/10
    ジャーナル フリー

    汽水湖である久美浜湾では, 冬季に貧酸素水塊が二枚貝養殖に被害を及ぼすが, その消長の詳細は未解明である。これを明らかにするため, 水温, 塩分, 溶存酸素濃度の分布の季節変動を調べた。貧酸素水塊の解消過程では, 亜熱帯性の湖沼や閉鎖性内湾でみられるような冬季の鉛直混合はみられず, 12月から3月にかけて, 湾口部からの外海水の進入および河川水の連行 (entrainment) によって貧酸素水塊が徐々に縮小した。久美浜湾のような本州中部日本海側に位置し, 流入河川の流域の標高が高くない汽水湖では, 冬季に降水量が多く, 降雨や数日で融ける降雪がただちに淡水として海域に流入するため, 上層に強い密度成層が形成され, 鉛直混合が阻害されていた。その結果, 夏季に底層で発生した貧酸素水塊は, 冬季まで残存し, 湾口から流入した外海水によって持ち上げられ, 中層貧酸素水塊となり, 養殖漁場へと到達することが明らかになった。

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