本稿では, マイクロプラスチック (MP) がもたらす環境影響を概観した上で, 水環境での動態および海域での生態系への影響, ならびにMPの分析手法, 特に, 粒径が小さいMPの分析手法に関する最新の知見を紹介した。陸域・河川におけるMPの状況について, 日本全国の河川でのMPの濃度, 日本の陸域から海洋に排出されるプラスチックの総量を推定した。海域におけるMPの状況について, 東京湾におけるMPの動態, 海洋生物におけるMPの取込・摂食の実態を示した。MPの分析方法について, サンプリング, 前処理, 機器測定の手法及びその課題について整理し, 技術的展望を示した。MPの環境中での動態ならびに生態系への影響を明らかにすることは, 社会システム全体でのプラスチックの適切な利用・管理のための有効かつ効率的な対策を検討する上で不可欠である。本稿で紹介した情報がその一助となることを期待する。
火山地域を含む流域では, 噴火による噴出物により流域河川の水質に影響を与える可能性がある。霧島火山群の1つである硫黄山は, 2018年4月19日に約250年ぶりに噴火活動を再開し, 噴火口から流出した泥水によって近隣を流れる長江川は汚染された。特に, ヒ素は環境基準値 (10 μg L-1) を超過した。本研究では長江川のヒ素に着目し, 流下過程における濃度変化, pHおよび電気伝導度 (EC) との関係, 流出の特徴を連続的な観測により明らかにした。その結果, 以下のことが明らかになった。1) 流下過程において支川との合流による希釈が作用し, ヒ素濃度の低下, pHの上昇, ECの低下が認められた, 2) ヒ素濃度とpHおよびECは相関を示し, その傾向は特に上流部の無降雨時に高い, 3) ヒ素は無降雨時に鉄やアルミニウム酸化物に吸着され, 河床に沈殿することで河川水中から除去される一方で, 降雨時には河床に堆積した懸濁態ヒ素が巻き上がることで水質が悪化する可能性がある。
国内の清澄な河川において, 外来付着珪藻Cymbella janischiiの侵入と分布拡大に伴う生態系サービスの低下が懸念されている。C. janischiiの侵入が確認されている多摩川水系において, その分布と季節消長を検討した。多摩川上流域では, C. janischiiは目視確認できるミズワタ状の群体を形成していた。中流域では顕微鏡下でのみ確認されたが, 下流域では出現はしておらず, 水域ごとに差異が認められた。多摩川の上流から中流域に合流する支川においてもC. janischiiが分布していたが, 現存量はごく僅かであった。多摩川上流域では4月から5月にかけてC. janischiiは群体を形成していた。その期間の水温は, C. janischii原産地における生育河川の水温とよく一致していた。