水環境学会誌
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45 巻, 2 号
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研究論文
  • 須戸 幹, 梶原 暢人, 岩間 憲治
    原稿種別: 研究論文
    2022 年 45 巻 2 号 p. 41-50
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/03/10
    ジャーナル フリー
    電子付録

    本研究では, 環境水中に残留する水田施用農薬の時間加重平均濃度 (TWAC) の測定手法としての極性有機化学物質集積サンプラー (POCIS) の適用性を検証した。琵琶湖流域の3水田群 (2.8~70 ha) と1つの流入河川で7~21日間, 除草剤2成分と殺菌剤1成分を対象にPOCISの浸漬と高頻度グラブサンプリング (2回 日-1以上) を同時に行った。POCIS法とグラブサンプリング法のTWACには高い相関関係があり, その差が0.5~2.0倍の範囲に14データセット中11データセットが含まれた。採水頻度を1, 2, 3, 4, 7日毎と仮定したグラブサンプリング法とPOCIS法でTWACを比較した結果, 採水期間中の濃度変動が小さいデータセット (CV ≦ 100%) では7日毎以上のグラブサンプリングでPOCIS法と同等の結果が得られたが, 採水期間中の濃度変動が大きいデータセット (CV > 100%) で必要であった採水頻度は3日毎以上であったと考えられた。

技術論文
  • 小林 憲弘, 高木 総吉, 木下 輝昭, 仲野 富美, 古川 浩司, 粕谷 智浩, 松巾 宗平, 寺中 郁夫, 山本 剛, 米久保 淳, 田 ...
    原稿種別: 技術論文
    2022 年 45 巻 2 号 p. 51-66
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/03/10
    ジャーナル フリー
    電子付録

    水道水質基準や目標値が設定されている6種類の陰イオンを一斉分析可能なLC/MSあるいはLC/MS/MS分析条件を検討した。さらに, 本研究で確立した分析条件が, 様々な種類の水道水や機種に適用できるかどうか検証するために, 15機関で分析法のバリデーション試験を実施した。水道水を用いた添加回収試験の結果, 臭素酸, 塩素酸, 亜塩素酸, 過塩素酸の4物質は, それぞれ12機関以上が良好な分析精度が得られたことから, 本分析法は水道水に含まれるこれら4種類の陰イオンを高精度に一斉分析可能と考えられる。ただし, チオ硫酸ナトリウムによる亜塩素酸の分解が見られたことから, 亜塩素酸を分析する場合にはEDAで脱塩素処理を行う必要がある。また, 物質によって検量線の直線性が確保できる範囲が大きく異なったことから, これらの陰イオンの分析においては検量線の妥当性が確保できる範囲を確認した上で適切な検量線を作成する必要がある。

  • 上野 智貴, 山本 民次, 福岡 浩一
    原稿種別: 技術論文
    2022 年 45 巻 2 号 p. 67-73
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/03/10
    ジャーナル フリー

    瀬戸内海では, 長期的な窒素・リンの総量規制により, 近年では魚介類の漁獲量低下やノリの色落ちといった貧栄養化問題が指摘されている。対策の一つとして, 下水処理場等事業所からの排水の緩和が行われるようになってきたが, 陸域からの負荷は沖合まで届かない。そこで本研究では, 栄養塩を溶出させることで魚介類を増殖・成長させることを想定し, 実海域で使用できる施肥材を開発することを目的とする実験を行った。原料は完熟発酵鶏糞を主成分とし, これに鉄分と固化剤を加えてプレスした固形の施肥材を作成した。フラスコレベルで溶出試験を行い, 施肥材から溶出するN/P/Fe比が微細藻類の増殖にとって好適な比となるよう工夫した。現場用にサイズをスケールアップした施肥材を用いて溶出試験を行ったところ, 5か月以上の溶出持続性が確認された。以上より, 開発した施肥材が海域において持続的な栄養塩の供給機能を発揮できることを明らかにした。

調査論文
  • 熊谷 博史, 伊豫岡 宏樹, 平川 周作, 石橋 融子, 渡辺 亮一
    原稿種別: 調査論文
    2022 年 45 巻 2 号 p. 75-81
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/03/10
    ジャーナル フリー
    電子付録

    福岡県内の小規模湖沼においてマット状の浮上藻類が発生し, 周辺の景観を損ね問題となっていた。対策を講ずる上で, 浮上藻類の種類, 発生場所, 量などの基礎的情報が必要であった。そこで採取した藻類を偏光顕微鏡観察と微生物群集解析により同定した。また, 可視光カメラと近赤外カメラを搭載したマルチコプターを用いた空撮調査を実施し, 調査で得られた近赤外オルソ画像を用いた画像解析により浮上藻類の定量化を試みた。その結果, 浮上藻類は主に Pseudanabaenaceae 科の糸状性藍藻の集合体であり, 夏季の浅瀬で集中的に発生していた。それらの増殖に伴う気泡が藻類集合体内部に付着し, 見かけの密度が減少したため, 湖底から剥がれて浮上したものと確認された。また水温と日射を考慮した計算藻類炭素量と浮上藻類面積の増減が対応していたことから, 藻類対策としては湖岸浅水部での日射量を制限する対策が有効であることが示唆された。

  • 浦瀬 太郎, 川野 唯人, 佐藤 美桜
    原稿種別: 調査論文
    2022 年 45 巻 2 号 p. 83-90
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/03/10
    ジャーナル フリー

    水環境中の薬剤耐性菌についての2000年代初頭の研究事例との比較を目的に、神奈川県内の金目川, 大根川, 渋田川, 鶴見川において, 2019年に大腸菌の様々な抗生物質への耐性率を調べた。下水道の普及率が高い地域においても, セフォタキシム耐性に代表されるヒト由来の大腸菌にしばしばみられる耐性プロファイルを持った大腸菌が多く検出され, 採水場所付近の合流式下水道の越流水の影響や伴侶動物の関与が示唆された。一方, テトラサイクリンとスルファメトキサゾールに同時に耐性を持つ株が渋田川で多く検出された。2000年代初頭の同じ場所での大腸菌における耐性調査に比較して, 今回の調査では, 畜産に関連すると考えられる耐性や一般的な耐性であるアンピシリンへの耐性率が有意に減少した。レボフロキサシンやゲンタマイシンなどへの耐性率は増加したが統計的に有意な増加ではなかった。

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