水環境学会誌
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37 巻, 6 号
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原著論文
  • 亀田 豊, 山口 裕顕, 玉田 将文, 太田 誠一
    原稿種別: 原著論文
    2014 年 37 巻 6 号 p. 211-218
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/11/10
    ジャーナル フリー
    表流水中微量放射性セシウム放射能測定法(ADiCS法)を確立した。ADiCS法は前段のPTFE膜による懸濁態セシウムの分離,後段の選択性ディスクによる溶存態セシウムの吸着を連続的に行い,その後PTFE膜とディスクの放射能をNaIシンチレーションカウンターで測定する。作業効率性および分析精度を検討した結果,SS濃度が20 mg•L-1以下の表流水20 Lでは蒸発乾固法より約6倍以上迅速に濃縮でき,検出下限値は約10 mBq•L-1であった。また,ADiCS法測定値は蒸発乾固法測定値の30%の誤差範囲内で一致した。ADiCS法による関東地方の表流水測定の結果,高沈着量地域の表流水から100 mBq•L-1以上の放射性セシウムが検出され,事故後の有意な増加が確認できた。以上より,従来法に比較して本手法は容易に現在および将来の水中放射能や水生生物中蓄積特性を評価しうると考えられた。
  • 見島 伊織, 吉田 征史, 藤田 昌史
    原稿種別: 原著論文
    2014 年 37 巻 6 号 p. 219-227
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/11/10
    ジャーナル フリー
    下水処理施設の窒素除去過程において温室効果ガスであるN2Oが排出されており,処理条件によっては排出量が大きく異なることが知られている。よって,N2O生成ポテンシャルやN2O排出量の変化を議論することで,N2O生成経路の特定やN2O排出量を低減できる条件を考察することを本研究の目的とした。N2O生成活性の評価のため,NO2-Nを添加しN2Oを生成させた試験においては,初期NO2-N濃度の増加および時間経過に伴って生成したN2Oは概ね増加した。これらの結果から,初期NO2-N添加を5 mgN•L-1とし,反応時間を1 hとすることでN2O生成活性を測定することとした。実下水処理施設において,硝化を抑制した運転を行った際にはN2O生成活性が高く,硝化を促進させることでN2O生成活性が低下した。これは,NO2-NのN2Oへの還元とNO2-NのNO3-Nへの酸化が競合することにより生じたと考えられた。また,Nitrospiraが多量に発現し,N2O生成活性を低減するように硝化反応を進行させることで,N2O排出を抑制できると考えられた。
  • 大久保 卓也, 佐藤 祐一, 東 善広
    原稿種別: 原著論文
    2014 年 37 巻 6 号 p. 229-237
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/11/10
    ジャーナル フリー
    滋賀県守山市の2カ所の水田群AとB(5.6,5.1 ha)で降雨時を含めた詳細な灌漑期の排出負荷量調査を行い次のことがわかった。(1)水田群AとBの灌漑期の差引排出負荷量は,T-Nで44と105 g•ha-1•d-1,T-Pで28と27 g•ha-1•d-1,TOCで214と276 g•ha-1•d-1,SSで3918と4113 g•ha-1•d-1であった。(2)降雨に伴う地表排出負荷量の増加分が灌漑期の総地表排出負荷量に占める比率は,T-N,T-P,TOC,SSにおいて約35~50%となり,降雨時の地表排出負荷量調査が重要であることが確認された。(3)T-N,T-Pの正味排出負荷量,差引排出負荷量は,水田1筆やライシメーターで求めた値に比べ水田群で求めた値の方が大きくなる傾向がみられ,これは,降雨に伴う畦畔からの土壌粒子の流出や農業排水路底泥の巻き上げによる懸濁粒子の流出が影響している可能性が考えられた。
  • 手塚 公裕, 大串 浩一郎, 緒方 直人, 長林 久夫
    原稿種別: 原著論文
    2014 年 37 巻 6 号 p. 239-250
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/11/10
    ジャーナル フリー
    近年,親水施設の整備が進められ,その安全性が課題となっている。本研究では親水活動時の滑り事故防止を目指し,河川等における水底の滑りやすさ(滑り抵抗係数)の定量的評価を行った。その結果,以下の知見を得た。1)滑り抵抗係数と付着Chl-a量には負の相関があり,付着藻類が増えると滑りやすくなることが定量的に明らかとなった。2)水中の栄養塩濃度が半飽和定数以下の場合,流速と付着Chl-a量に正の相関がある。栄養塩濃度が半飽和定数よりも高い場合,日積算日射量が多い地点で付着Chl-a量も多い傾向がみられた。よって,栄養塩濃度,流速,日射量を管理することで付着藻類の増殖抑制が可能であると推察される。3)付着基質の種類にかかわらず,付着Chl-a量の増加に伴い滑りやすくなった。また,同じ付着Chl-a量では滑りやすい素材のC.S.R'が低くなった。
  • 賀数 邦彦, 稲森 隆平, 徐 開欽, 熊田 純, 稲森 悠平
    原稿種別: 原著論文
    2014 年 37 巻 6 号 p. 251-257
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/11/10
    ジャーナル フリー
    水圏生態系マイクロコズムを用いアルコールエトキシレート(AE)の生態影響評価を行った。その結果,2 mg•L-1では対照系と比較して個体数の減少は見られず,10,25 mg•L-1では減少する種がみられるが,すぐに回復した。50,100 mg•L-1では大幅に減少,増加する種がみられ,異なる生物密度に変化した。生産量(P),呼吸量(R)の解析からは2 mg•L-1において対照系と有意差がなく,10,25,50,100 mg•L-1では有意差があり,影響ありと判断した。また,10 mg•L-1では添加後2日目,25 mg•L-1では添加後7日目に回復した。50,100 mg•L-1では14日間では回復できない濃度と判断した。以上から,P,R指標が個体数遷移と同等の評価を可能にすることがわかった。また,本研究で得られたマイクロコズム無影響濃度は,メソコズム試験と高い相関があることが示唆された。
調査報告
  • 三上 剛史, 眞家 永光, 嶋田 浩, 柿崎 竹彦, 高松 利恵子, 伊藤 伸彦, 田中 勝千, 嶋 栄吉
    原稿種別: 調査報告
    2014 年 37 巻 6 号 p. 259-264
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/11/10
    ジャーナル フリー
    堤外地における放射性Cs集積に関わる微地形(標高差)の影響を明らかにすることを目的とし,阿武隈川2次支流である石田川の堤外地において,10 m程度の区画から表層5 cmの底質試料を15地点より採取し,放射性Cs濃度,乾燥密度,および,粒度分布を測定するとともに,試料採取地点の標高をRTK-GPSを用いて測量した。その結果,採取試料の放射性Cs濃度は1.46×103~3.43×104 Bq•kg-1であるとともに,試料採取地点の標高(最大比高74 cm)は,放射性Cs濃度,細粒分割合,乾燥密度を有意に説明することができた。その理由として,放射性Csは主に出水時に懸濁態で流出し,出水時に冠水する範囲においては,植生の繁茂する高水敷で懸濁物質の沈降・堆積が起こりやすい一方,標高の低い地点においては,放射性Csを含んだ懸濁物質は水流により洗脱されてしまう可能性が考えられた。
  • 北村 立実, 渡邊 圭司, 須能 紀之, 吉尾 卓宏, 位田 俊臣, 花町 優次, 中村 剛也, 戸田 任重, 林 誠二, 黒田 久雄
    原稿種別: 調査報告
    2014 年 37 巻 6 号 p. 265-271
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/11/10
    ジャーナル フリー
    霞ヶ浦流入河川や湖内全域を対象に底泥の脱窒活性について調査し,脱窒活性の分布的特徴および水温や硝酸イオン(NO3-)濃度への依存性について検討した。その結果,脱窒活性は北浦流入河川や北浦湖内上流部で大きかった。脱窒活性は水温やNO3-N濃度の上昇に伴い増加した。湖内底泥の脱窒活性は25°Cの水温まで増加したが,北浦流入河川の脱窒活性は40°Cまで増加し続けた。NO3-N濃度の依存性から算出した最大脱窒速度は北浦流入河川で湖内よりも6倍以上を示した。また,重回帰分析によって,脱窒活性に影響を与える要因として底泥間隙水のDOC濃度が最も大きく寄与していることが示唆された。
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