水環境学会誌
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43 巻, 6 号
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研究論文
  • 原田 美冬, 古澤 和輝, 鈴木 祐麻, 新苗 正和, 和田 善成, 市村 重俊
    原稿種別: 研究論文
    2020 年 43 巻 6 号 p. 165-173
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/11/10
    ジャーナル フリー

    下水処理水の再利用を目的とした既存の統合的膜処理システムでは精密ろ過膜 (MF膜) と逆浸透膜 (RO膜) が用いられているが, バイオポリマーによるRO膜のファウリングが問題となっている。本研究では, アルギン酸によるRO膜のファウリングおよび統合的膜処理システムにおけるアルギン酸の挙動にCa2+が与える影響について理解を深めることを目的とした。実験の結果, MF膜による前処理を行わない場合は, Ca2+との安定な配位結合により多量体を形成するGGブロックおよびMGブロックが選択的にRO膜上に堆積するために, Ca2+によりRO膜のファウリングが促進することが明らかになった。その一方で, MF膜による前処理を行った場合は, 多量体を形成したGGブロックおよびMGブロックがMF膜により除去されるため, むしろCa2+によりRO膜のファウリングが抑制されることが明らかになった。

調査論文
  • 藤原 建紀, 樋口 和宏, 藤井 智康
    原稿種別: 調査論文
    2020 年 43 巻 6 号 p. 175-182
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/11/10
    ジャーナル フリー
    電子付録

    内湾海域の生態系を維持するために最低限必要な, 全窒素TN・全リンTP濃度を現地実験によって調べた。実験では, TNの高い大阪湾北東部から低い播磨灘にかけて, 栄養塩濃度勾配に沿って7測点を設け, アサリおよび付着生物群集の栄養状態・成長速度と, TNとの関係を調べた。また, 実験海域の一次生産量分布を計算で求めた。調査海域の一次生産量は, TNに強く比例する海域と, 一次生産量の低い外海の特性を持った海域に明瞭に分かれ, その境界はTN=0.2 mg L-1であった。アサリの軟体部湿重量はTNと強い正の相関があった。アサリの栄養状態は, TN < 0.3 mg L-1の海域では低く, 気象擾乱等で減耗が起きやすい状態であった。付着板上の生物量は, 海域のTNと高い相関があった。海域の年平均TNとTPの間には強い相関関係があり, TN=0.2 mg L-1はTP=0.029 mg L-1に相当した。

  • 柴田 由紀枝, 岩崎 雄一, 竹村 紫苑, 保高 徹生, 髙橋 徹, 松田 裕之
    原稿種別: 調査論文
    2020 年 43 巻 6 号 p. 183-188
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/11/10
    ジャーナル フリー

    和賀川の清流を守る会 (以下, 守る会) は, 岩手県を流れる和賀川を公害から守り, 清流を保護することを目的として多様な利害関係者によって1972年に結成された。上流域に存在する休廃止鉱山の水質監視を主要な活動の1つとして, 守る会は, 会発足時から河川での水質調査, 1976年からは鉱山での水質調査を開始し, 測定結果を会報で報告している。排水基準を超過した場合も含むすべての測定結果が, 会報で公開・議論されている点は情報公開のあり方の点からも興味深い。また, 会報のテキスト分析によって, 1972年から2019年までの間に, ①公害への危惧, ②休廃止鉱山での水質監視や鉱害防止対策, ③水生生物など自然環境全体の保全, と会報の話題が変化していることが示された。守る会の活動を分析・整理した本研究の成果は, 排水基準の遵守のみに依拠しない休廃止鉱山における柔軟な坑廃水管理を検討する上で貴重な基礎資料となると考えられる。

  • 大島 詔, 北野 雅昭
    原稿種別: 調査論文
    2020 年 43 巻 6 号 p. 189-195
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/11/10
    ジャーナル フリー

    大阪市内を流れる東横堀川-道頓堀川では水質悪化の原因の一つとして降雨時の下水越流水の存在があり, これを一時的に貯留する平成の太閤下水と称される雨水貯留管が2015年4月に供用開始したものの, 両河川中の大腸菌群数は有意に減少しなかった。雨水貯留管が機能しているのであれば下流側の大腸菌群数は上流側の大腸菌群数が流下日数と水温に依存して減衰した値で説明できると考えられたので, 室内実験で大腸菌群数の減衰速度を求め, 下流側における大腸菌群数の期待値と予測値の差をモンテカルロ法で比較した。求めた減衰速度は太陽光等の影響が考慮されていない値のために予測値は過小評価となったが, 供用後は天候に関わらず期待値と予測値の差がほぼ一致したので雨水貯留管が機能していることが示された。両河川で大腸菌群数が減少しないのは雨水貯留管による削減効果を上回る量の大腸菌群が上流部より流入するようになったためと考えられた。

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