水環境学会誌
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38 巻, 5 号
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研究論文
  • 木村 裕哉, 井坂 和一
    原稿種別: 研究論文
    2015 年38 巻5 号 p. 117-125
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/09/10
    ジャーナル フリー
    包括固定化したアナモックス担体と反応槽容積5 m3規模のアナモックス槽を用い,前処理プロセスと組み合わせ,化学工場排水中の窒素除去の実証試験を行った。高水温のアンモニア製造排水を用いて,水温30℃条件で処理性能の立上げを行った結果,アナモックス槽は約2ヶ月で所定の処理性能を得た。その後,排水が低水温の尿素排水に変更され,水温16.1℃でアナモックス槽を運転した結果,安定した処理性能を得た。再度,アンモニア製造排水に切替わり,水温を約30℃に上昇させたが,アナモックス槽は3日以内で所定の窒素除去速度まで上昇した。次に,水温17.1℃の低水温条件下で運転した結果,安定して窒素除去速度1.9 kg-N•m3•d-1を得た。包括固定化アナモックス担体を用いた本システムは,産業排水処理で求められる大幅な水温変動や排水種類の変動に対応でき,さらに低水温条件下においても適用できることを実証した。
  • 佐藤 邦明, 吉木 沙耶香, 岩島 範子, 若月 利之, 増永 二之
    原稿種別: 研究論文
    2015 年38 巻5 号 p. 127-137
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/09/10
    ジャーナル フリー
    多段土壌層法において土壌層への通水資材の混合による通水性の改良効果と水質浄化能との関係を調査した。地域資源の活用に着目し,通水資材に島根県の地域資源であるゼオライト,石州瓦,来待石,ヤマトシジミの貝殻,竹炭を用いた。ゼオライトを除き通水資材の混合により土壌層の通水性が向上した。特に貝殻の混合が土壌層の通水性を高めカルシウムによって土壌構造が安定したためと考えられた。ゼオライトは交換性ナトリウム含量が高く,混合によって土壌が分散し通水性が低下したと考えられた。石州瓦は水質浄化に寄与する化学性は乏しいが通水性向上効果は高く,来待石は交換性ナトリウム含量の高さや脆さからか,その向上効果は低かった。竹炭は有機物除去能に優れていた。土壌層の通水量が多いほど水質浄化能の向上が見られ,特にリンで顕著であった。地域資源や廃棄物の利用により浄化性能を向上させることができ,これらを適用できる可能性が示された。
  • 尾形 有香, 合田 昌平, 遠山 忠, 清 和成, 池 道彦
    原稿種別: 研究論文
    2015 年38 巻5 号 p. 139-147
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/09/10
    ジャーナル フリー
    4-tert-ブチルフェノール資化菌として分離されたSphingobium fuliginis OMI株は,生物難分解性物質であるビスフェノールS(BPS)を分解可能な菌株である。本研究では,OMI株によるBPSの分解経路を明らかとするとともに,その分解過程において生成された分解生成物が活性汚泥によって除去可能であるかを評価した。OMI株はBPSを水酸化した後,メタ位の開裂によって分解するが,多様な分解生成物を蓄積し,DOCとしての除去はほとんど認められなかった。一方,活性汚泥はBPSを分解・除去することはできなかったが,OMI株によって生成した代謝物を,微生物分解,化学分解や吸着作用を通じ,DOCとして39%を水中から除去できることが示された。これらのことから,一般的な水処理システムである活性汚泥法では除去できないBPSも,OMI株による初期分解を組合せることにより,分解生成物を含めてかなりの部分を処理し得ることが示された。
  • 辻 盛生, 加藤 邦彦, 菊池 福道, 佐々木 理史
    原稿種別: 研究論文
    2015 年38 巻5 号 p. 149-157
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/09/10
    ジャーナル フリー
    鶏舎洗卵所の低濃度有機性排水処理において,間欠鉛直流式人工湿地を2基直列に用いた水質浄化システムの処理能力を評価した。初期に6.8 mg•L-1であった処理水のBOD(生物化学的酸素要求量)値は,安定後は2~3 mg•L-1前後で推移し,90%以上の減少率を示した。SS(懸濁物質)やBODの除去はろ材の粒径が粗い湿地1で進み,D-BOD(溶存態BOD)の除去は細粒のろ材を用いた湿地2で進む傾向が見られた。各測点のNH4-N濃度は微量であるが,無機化によって生じたNH4-Nが迅速に硝化され,流下に伴ってNO3-Nが増加した。OTR(酸素移動速度)平均値は6.5 g•m-2•day-1であり,欧米の基準とされる28 g•m-2•day-1より低く,負荷量の上限は確認できなかった。湿地内の滞水時間は,冬期は夏期よりも長かった。冬期間は固形有機物の分解が遅れて目詰まりが生じるものの,夏期にかけて水温が上昇し有機物の分解が進行することにより,流下能力の改善が示唆された。
技術論文
  • 鮎川 大亮, 今井 剛, Tuan Van LE, 神野 有生, 樋口 隆哉, 山本 浩一, 関根 雅彦
    原稿種別: 技術論文
    2015 年38 巻5 号 p. 159-166
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/09/10
    ジャーナル フリー
    パームオイルを生産する際に排出される廃水(POME)には油分がエマルジョンの状態で含まれている。現在,この廃水処理の多くはそのコストの安さから開放型ラグーンによって嫌気的に処理されているが,広大な敷地を要する,処理水質が悪いなど様々な問題が生じている。本研究では, 環境への負荷を軽減し,加えて分離•回収した油分を再利用するという観点からマイクロ及びノーマルバブルを組み合わせた新規油水分離技術を開発した。マイクロバブルにノーマルバブルを組み合わせることでマイクロバブルの浮上速度を高め, 油水分離効率の向上を図った。実験結果から,マイクロバブルにノーマルバブルを組み合わせることで,油水分離効率の向上が確認された。さらに タイにて実際のPOMEを用いて同様な装置で油水分離実験を行った場合にもその効果が確認され,マイクロバブルのみの処理と比べ油水分離率が約40%向上することが示された。
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