マシジミ (Corbicula leana) と推定される琵琶湖産淡水シジミのろ水速度および呼吸速度の水温, 溶存酸素 (DO) 濃度依存性を実験や文献調査を通して明らかにし, その生育可能条件を評価した。殻長14.9 ± 1.2 mmの成貝を用いた実験の結果, ろ水速度は水温およびDO濃度に依存した。水温影響は高温阻害を有する指数型影響関数で表現でき, 至適水温は20.8 ℃であった。ろ水速度が低下し始める限界DO濃度は2.6~4.0 mg L-1の範囲にあった。琵琶湖南湖湖底直上における平均餌濃度を3 mg-C L-1と仮定した場合, DO濃度 ≥ 4 mg L-1の条件で成長可能な温度域は12.1~26.6 ℃と評価された。湖沼温暖化により水温が1 ℃上昇すると年間成長量は0.005~0.01 g-C y-1 個体-1低下すると推定され, 湖沼温暖化が琵琶湖におけるシジミの生育に負の影響を与えることが明らかとなった。
河川流域における化学物質流出事故発生後の国や自治体による対策の促進を目的として, 化学物質の時空間的濃度を迅速に把握できる流下予測早見表を開発した。流域規模が異なる3水系で集水域や河床勾配の違いを反映させた事故発生地点を設定し, 時間解像度を1分に詳細化した河川モデルAIST-SHANELを用いて晴天時, 雨天時, 集中豪雨時別にクロロホルムを対象としたシミュレーションを実施した。推定した濃度を事故発生地点からの流下距離と事故発生後の流下時間を軸とした流下予測早見表に表示した。全国水系で早見表を参照できるよう全ケースの早見表を集水面積と河床勾配の観点で体系化し, 河床勾配が大きいほど化学物質の流下時間は短く, 集水面積が大きいほど希釈効果により化学物質のピーク濃度が低くなる傾向を得た。これにより, 全国の任意の河川水系において現在よりも速やかで効率的な化学物質流出事故対策の促進を図ることが可能となる。