本研究では,バングラデシュのダヒから分離した乳酸菌 J525-2 株の抗変異原性を調べた。ダヒ“dahi”は,インドおよびバングラデシュなどで伝統的に作られている発酵乳製品である。本菌株はホモ型発酵形式で L-乳酸を生産する中温性の乳酸球菌であり,糖類発酵性試験の結果などから
Lactococcus lactis subsp.
lactis と同定した。この菌株で調製した発酵乳は食品変異原物質であるヘテロサイクリックアミン(Trp-P-1, Glu-P-1, MeIQ)に対して抗変異原性を示した。抗変異原性の要因を検討するために培養液と菌体を除去した培養濾液の抗変異原性を調べたところ,培養濾液では抗変異原性が見られなかったことから,菌体が抗変異原性に関与していると考えられた。そこで,変異原物質の菌体への吸着を調べたところ,菌体は変異原物質を吸着していた。この吸着活性に及ぼす pH および反応時間の影響を調べたところ,pH 6.0で最大となり酸性側では低くなった。また,吸着は即時的に起きており,反応時間10分後にはほぼ最大となり50分後まで吸着率はほとんど変化しなかった。以上のことから,この J525-2 株で調製した発酵乳製品が示す抗変異原性は菌体によるものであることが示唆され,菌体は変異原物質と結合する事がわかった。
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