ミルクサイエンス
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65 巻, 1 号
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原著論文
  • 清水(肖) 金忠, 南 淳一, 柳澤 尚武, 小田巻 俊孝, 阿部 文明, 齋藤 さな恵, 下田 妙子
    2016 年 65 巻 1 号 p. 1-9
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/04/12
    ジャーナル フリー
     本調査では,ビフィズス菌配合カルシウム強化ミルクを継続的に摂取している中高年(50代~80代)の男女を主な対象としてアンケート調査を行った結果,摂取群では,便秘傾向者が少ない,日常生活で物忘れが激しいと感じることが減った,大腸ポリープなどの疾病罹患経験が少ない,女性の継続摂取者では骨折経験が低かったなど,様々な保健作用が認められた。非摂取群には,牛乳を摂取している方も含まれていたが,当該飲料の摂取有無による比較において,このような健康状態の違いが観察された要因としては,カルシウムやタンパク質,ビタミンなど牛乳由来の栄養成分の補給とともに,ビフィズス菌配合による腸内環境の改善が寄与している可能性が考えられる。本調査で観察された男女の健康状態や疾病の違いについては検証の余地があり,また疾病の罹患リスクについて因果関係をより明確にするためには,今後,調査対象者の臨床検査や追跡調査などによる検証が必要である。
  • 平田 昌弘, 山田 勇, 内田 健治, 元島 英雅
    2016 年 65 巻 1 号 p. 11-23
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/04/12
    ジャーナル フリー
     本稿の目的は,1)中央アジアのキルギスにおける移牧民の乳加工体系を明らかにし,2)キルギス移牧民の乳加工体系の特徴を周辺地域と比較検討することにより分析し,更に,3)ユーフラテス大陸北方域に位置するキルギス移牧民の乳加工体系の発達史について推論することにある。現地調査は,キルギス移牧民13世帯を対象に,観察とインタビューを2000年11月,2014年 8 月におこなった。キルギス移牧民の乳加工体系は,発酵乳系列群とクリーム分離系列群の乳加工技術を採用していた。発酵乳系列群の乳加工技術では,酸乳,チーズ,乳酒を,クリーム分離系列群の乳加工技術では,クリーム,バター・バターオイル,酸乳,自然発酵乳,チーズを加工していた。周辺地域の乳加工技術と比較分析した結果,キルギス移牧民の乳加工体系の特徴として以下の 2 点を明らかにした。①クリーム分離系列群や乳酒の加工というユーラシア大陸北方域の冷涼な生態環境に適合した乳加工技術を発達させたこと,②凝固剤使用系列群の乳加工技術を採用せず,凝固剤を利用してまでチーズを加工するようには発達してこなかったことである。キルギス移牧民の乳加工体系の発達史は,西アジア型の発酵乳系列群の乳加工技術を土台とし,冷涼性ゆえにクリーム分離系列群と乳酒の乳加工技術が発達し,近年のクリームセパレーターの採用により乳脂肪分画はクリーム分離系列群に依存するように変遷していったと結論づけることができる。
  • 山田 成臣, 岩本 千鶴, 中村 真梨枝, 添田 美里, 坪井 洋, 狩野 宏, 浅見 幸夫
    2016 年 65 巻 1 号 p. 25-31
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/04/12
    ジャーナル フリー
     プリン体を多く含む食品の過剰摂取は高尿酸血症の原因となる。腸管におけるプリン体の吸収を低減することで,血清尿酸値の上昇や高尿酸血症の悪化を抑制できる可能性がある。我々は乳酸菌によるプリン体の吸収低減の可能性を検証した。初めにプリン塩基がプリンヌクレオシドよりも吸収されにくいことから,プリン塩基への分解能が高い菌株として Lactobacillus gasseri PA-3(以下 L. gasseri PA-3)を選抜した。また,L. gasseri PA-3 が少なくともアデノシンと AMP を取り込むことを確認した。更に in vivo における L. gasseri PA-3 とプリン体(アデノシンまたは AMP)の同時投与試験で L. gasseri PA-3 のプリン体吸収低減効果を明らかにした。最後に血清尿酸値が 6~8 mg/dL の被験者を対象に L. gasseri PA-3 含有ヨーグルトの摂取試験を行った結果,L. gasseri PA-3 摂取時の血清尿酸値の変化量が対照群よりも有意に低く,ヒトでの有効性も確認された。これらの結果より,L. gasseri PA-3 は腸管においてプリン体の吸収を低減させ,適切な血清尿酸値の維持の一助になると考えられた。
総説
平成27年度日本酪農科学会奨励賞 受賞記念総説
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