本研究は,市販乳業用スターターを使用して製造した発酵バター様乳製品の香気的特性について解析した。発酵バター様乳製品は,乳業用スターターで発酵させたウシ乳のクリームから調製した。短鎖脂肪酸やラクトンを含む揮発性化合物はGC-MS分析により評価した。その結果,脂肪酸分析では2種類の乳酸菌で構成されているスターター (Lactococcus lactis subsp. lactis, Lc. lactis subsp. cremoris) を使用した発酵バター様乳製品で,酪酸とn-デカン酸が著しく高くなることが判明した。一方,ラクトン分析では5種類の乳酸菌で構成されているスターター (Lc. lactis subsp. lactis, Lc. lactis subsp. cremoris, Leuconostoc mesenteroides, Leu. pseudomesenteroides, Lc. lactis subsp. lactis biovar diacetylactis) を使用した発酵バター様乳製品で,
δ-ラクトンが多く生成されることが判った。これらの結果より,Lc. lactis subsp. lactisとLc. lactis subsp. cremorisは一部の脂肪酸を生成するためのトリアシルグリセロールの分解に関与し,ラクトンはLc. lactis subsp. lactis biovar diacetylactisとLeuconostoc属菌種が合成し,とくにLeu. mesenteroidesに高い合成能力があると考えられた。以上より,乳酸菌の特性を利用して使い分けることによって,目的に応じた発酵乳製品の製造が可能と考えられた。
抄録全体を表示