2種類の硬質系チーズから製造した複合型チーズが熟成中においてどのようにして単独で製造したチーズと異なった味や芳香を生成して行くのか, チーズ構造上でのその要因を明らかにすることの一環として, 各種試薬に対するタンパク質の溶解性および熟成中の物性について検討し, 以下の結果を得た。
(1) コントロールとしてのゴーダチーズおよびチェダーチーズと, 復合型チーズのゴーダ側 (G側) およびチェダー側 (C側) の塩化ナトリウム, チオシアン酸ナトリウム, 尿素または2-メルカプトエタノールの各種試薬を添加したリン酸緩衝液 (pH7.6カリウム塩)による熟成中のタンパク質の溶解性を調べた結果, 熟成前においては何れの試薬共に緩衝液だけのものに比べ溶解性が高かった。また, 熟成の進行につれて各試薬での溶解性に変化が見られ, その中で塩化ナトリウム添加溶液に対しては若干の溶解性の低下が認められ, 2-メルカプトエタノール添加溶液での溶解性の低下が顕著であった。
(2) タンパク質の溶解性が特に低下した2-メルカプトエタノール添加時の試料について, ポリアクリルアミドゲル電気泳動を行った。その結果, コントロールチーズのゴーダおよびチェダーチーズに対して複合型チーズの G側と C側は, 共に熟成経過につれてα
s-カゼインの分解がβ-カゼインより顕著であり, 2-メルカプトエタノールによって, 熟成中のカゼインに対して特異的に作用し, 可溶化するものではないことが確認された。しかし, 120日熟成した両チーズについて2次元電気泳動を行ったところ, 複合型チーズにはG側で2ヶ所, C側で1ヶ所に新しいスポットの形成が認められた。
(3) 熟成120日の複合型チーズの破断応力は65 g, 硬さは3502 g, 引張強度は 150 g/cm
2であり, これらの値はチェダーチーズのそれらよりも高かった。
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