西暦2011年3月11日の東日本大震災が,津波と事故での二つの想定外が現代の日本社会の科学と技術・工学の分野に突き付けた大きな二つの課題について私論を述べる。科学の立場から推定結果の正しさの検証の限界と結果の不確かさの軽視であり,技術的・工学的な意味からは安全,防災,防護の意味の確認と経験の蓄積の重要性である。前者の科学シミュレーション計算による検証済みでない予測結果についての,後者の状況の中での不用意な重視傾向に警鐘を鳴らす。その上で,想定外の事故時災害時に発揮する人間(集団)の高い能力に着目し,その育成方法に触れる。
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